北西航路観測チーム 観測便り

氷中航行(2012.7.30)

現在地:カナダ・ビクトリア海峡(北緯69度14分、西経100度38分)

チームメンバー:山口一(東京大学)、柴田啓貴(北見工大)

ブリッジから見た海氷

ブリッジ右舷側より後方を見る。割れたリッジ氷が立ち上がっている。最大氷厚3m以上。

後半の氷況。色の付いた丸っこい氷が多い。

白夜

前夜に氷海中で停止した船は、30日17時頃までエンジンを止めて停泊していた。停泊中はインターネットが使えたので、依頼されていた8月4日極地研一般公開用の写真と文書を送った。今航海ではネットの調子が非常に悪く、この後も下船までインターネットが使えなかったので、この時に送れたのは僥倖であった。

船が再発進した17時頃から氷中計測を再開し、17:35からブリッジでの氷況目視観測も開始した。船は日付が変わる直前の23:50まで密氷域を航行したので、目視観測含め、氷況観測を深夜まで継続した。

この時の氷況が、今回の全航海を通して、一番厳しかった。また、22:10頃に、氷が突然切り替わった。最初の氷況は1年氷中心で2年氷が混じるという感じ、後半の氷況はアイス・アルジー(氷に住み付く植物プランクトン)が沢山ついた多年氷中心 。船が取得しているRadarsat衛星画像では、後半の氷況の方が白っぽく映っており厳しい様に見えたが、実際には、前半の方が厳しく、リッジ氷、ハンモック氷を突破するため、Rammingを3回おこなった。前半と後半の差は、氷盤の形状とサイズ。後半の方が氷盤サイズが小さく、丸っこかったため、殆ど砕氷無しで10knot前後の船速にて航行できた。船もさることながら、船員の氷中航行技術も大したものである。

氷中航行終了までは快晴であったが、その30分後には濃霧になった。氷縁域では霧が出易いので霧に対する注意も航行には重要だ。