2015年11月のプレスリリース「観測コストを考慮した北極海上の最適観測頻度を実証 −北極海航路の気象・海氷予測の高精度化に貢献−」に関して、論文の著者である猪上 淳PIに質問しました。プレスリリースとあわせてお読みください。
プレスリリースの要点
- 北極海上の気象予測の精度を効果的に向上させるには、高層気象観測を1日4回の頻度とすることが最適である。
- 気象予測の精度が向上することで、海氷予測も改善した。
- 将来の安全な北極海航行のためには、観測コストと効果のバランスが最適な観測網の構築が望まれる。
質問
① 1日4回の特別観測には、どのくらいコストがかかるのですか?
観測消耗品として、ラジオゾンデセンサー、バルーン、ヘリウムが挙げられます。1回あたり約3.5万円、4回で14万円になります。これを2週間実施すると200万円近くかかります。
② 北極域における高層気象観測の難しさとはなんですか?
観測するロジスティクスが限られることです。船舶では運航計画に縛られるため、研究上融通の利くニーオルスンなど観測点を有効活用する必要があります。
③ 海外も含めて、プレスリリースの反響はいかがでしたか?
「みらい」北極航海でお世話になったアイスパイロットのDavid Sniderさんが海運関係のサイトで特集してくれました。http://maritime-executive.com/features/weathering-change-in-the-arctic
他にも海外の雑誌からインタビューを受けるなど、海外の方が敏感に反応しています。
④ ご自身の研究について、特にどのような人に興味をもってもらいたいですか?
海運関係者だけではなく、気象予報センターの方々にも有益な情報だと思っています。
⑤ 今後はどのような研究をするのですか?
今回は主に夏から秋における北極海航路が対象でしたが、次は冬季における中緯度の寒波予測にどの程度北極の観測データが効果的かを調査する予定です。
猪上PIの「気象・海氷・波浪予測と北極海航路支援情報の統合」メニューでは、今後も気象・海氷予測向上のための観測網の最適化を目指し、研究を進めます。
ArCS事務局
猪上 淳/国立極地研究所・准教授(テーマ1 PI)