ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

平成27年度若手研究者海外派遣報告: MAC、ASSW2016およびAOSへの参加

 2016年3月8日から21日にかけて、私は、アラスカ大学フェアバンクス校において、ArCS若手研究者海外派遣支援事業の助成を受け、研究を行いました。本研究は、モデル北極評議会(MAC)、北極科学サミット週間(ASSW)2016、および北極観測サミット(AOS)の参加を通じて、北極評議会における日本をはじめとするオブザーバー国の今後の役割について考えることを主な目的としていました。

 滞在期間の前半には、モデル北極評議会の傍聴を行いました。モデル北極評議会とは、学部学生や大学院生を対象とした北極評議会の模擬交渉です。2014年にロシアで開催されたパイロット版に続く、今回の第2回モデル北極評議会では、約70名の参加者がPAME作業部会、SDWG作業 部会、SAO会合および閣僚会合を舞台としたシミュレーションに取り組みました。傍聴を通じて、オブザーバーの役割を含めて、北極評議会の会合がどのように運営されているのか、実践的な知見を得ることが出来ました。また、意外であったのは、アジアの大学に所属する学生の参加者が一人もいなかったことでした。次回2018年にフィンランドで開かれる予定の第3回モデル北極評議会では、日本の大学に所属する学生が参加することに期待したいと思います。

  研究期間の後半では、ASSWおよびAOSに参加しました。とりわけ、3月15日のInternational Arctic Assembly Dayにおける一連の報告は、北極海中央部における漁業における交渉や科学協力タスクフォース(SCTF)における法的拘束力をもつ合意の交渉の最新情報 を得ることができ、非常に有益でした。同時に、SAO会合の関係者に対して、同会合での議論についてインタビューを行いました。このインタビューで見えてきたのは、SAO会合におけるオブザーバー国の非常に限定された役割です。例えば、今回の会合においてオブザーバー国には、個別にステートメントを表明する機会がなかったということです。

 総合すると、今回の研究は、北極の法政策的研究に入ってまだ日の浅い私にとって、北極研究者との人脈を 構築する上でも、北極に関する問題についての最新情報を収集する上でも、大変意義深いものでした。また、日本がそのオブザーバーの地位を利用して、いかにより実質的に北極評議会の活動に関与していけるのか考えていく必要があると感じました。最後になりましたが、フェアバンクスにおける私の研究を支援して頂いた全ての方に深く感謝申し上げたいと思います。

 

稲垣治

神戸大学極域協力研究センター(PCRC)学術研究員)

DSCF2759r.jpg アイスブレーカーの会場にて、若手派遣メニューの齊藤PI(右)と人社系メニューの東北大学高倉教授(左)と議論する派遣者 (中央)