ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

地球観測に関する政府間会合(GEO)ワークプログラムシンポジウム報告

地球観測に関する政府間会合(GEO)のワークプログラムシンポジウムが2016年5月2日~4日の期間、スイス・ジュネーブにおいて開催されました。GEOは地球観測サミット等での議論を元に2005年に設置された100以上の国と90以上の国際機関が参加する国際枠組みで、本シンポジウムはGEO参加国・参加国際機関の関係者が集い、GEOがワークプログラムで設定する課題(タスク)の構成や目標達成までの問題点や連携強化のための議論の場となっています。

GEOは地球観測および観測データの公開・共有を推進することで地球規模課題に対処するための政策決定に資することを目的に掲げ、WMO, WCRP, GCW, GCOS, SAON(※)等の国際機関・枠組みと有機的に連携して活動しています。極域を含む寒冷圏に関しては、氷床や雪氷の観測やデータの普及について世界の関係機関・プロジェクト間の連携構築に取り組んできた結果、2016年には寒冷圏イニシアチブ(GEOCRI)が設置されました。シンポジウム期間中にはGEOCRIの実施計画策定のための会合が開かれ、中国、フィンランド、ノルウェー、米国、日本他、GEOCRIの参画者によって議論が行われました。GEOCRIの活動は2017年より本格化する予定で、GEOCRI実施計画への更なるインプットを世界中の北極・寒冷圏関係コミュニティに呼びかけています。

ライアンGEO事務局長も、今年3月に開催されたArctic Observing SummitでGEOCRIを紹介するとともに、YOPPをはじめとする北極圏の観測・データ共有に向けた様々な取り組みとの連携強化への意欲を表明しています。国立極地研究所が運営する北極域データアーカイブシステム(ADS)はGEOとの連携を進め、GEOが運営する観測データポータルGEOSS-Portalへ登録しメタデータの提供を開始しました。GEOSS-Portalへの登録により、世界中の観測機関、研究機関、行政機関、政策決定者、ステークホルダーによって日本の北極研究のデータが活用されること、また、日本の北極域での活動がより世界に知られることが期待されます。

山田 亜紀子(JAMSTEC)

(※)WMO…世界気象機関
WCRP…世界気候研究計画
GCW…全球雪氷圏監視計画
GCOS…地球気候観測システム
SAON…持続的な北極観測ネットワーク

WMO本部で開かれたシンポジウムの様子