ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

ジョイントワークショップ 「持続可能な北極への挑戦」

2016年4月11日、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)の実施テーマの一つである「北極の人間と社会」は、カナダのヴィクトリア大学と共同でジョイントワークショップ「持続可能な北極への挑戦」を開催しました。今回のワークショップは、(1)北極の諸問題に関する専門知識の交換を促進することと、(2)北極から生じる課題の解決に、社会科学と自然科学両方において日本が積極的に貢献していく土台を築くことの2点を目的としていました。

ワークショップにはカナダと日本から専門家が集まり、北極に対する様々なアプローチについて議論が行われました。「北極に対する社会科学的アプローチ」と題した前半のセッションでは、ヘザー・ニコル教授(トレント大学)が北極と土地請求権問題に対するカナダの見解について、大西富士夫助教(日本大学)が日本の北極政策について、ゲイル・フォンダール教授(ノーザン・ブリティッシュコロンビア大学)が世界における北極の社会科学研究について、テッド・ボイル助教(九州大学)が北極圏をめぐるアジア各国の政策について、それぞれプレゼンを行いました。「北極に対する自然科学的アプローチ」と題した後半のセッションでは、テリー・プラウズ教授(ヴィクトリア大学)が北極における淡水システムについて、渡辺佑基准教授(国立極地研究所)が日本における生物多様性研究についてプレゼンを行いました。

全体討論では、北極域研究に自然科学と社会科学の両方をどう組み込んでいくかということが議論されました。そこで挙げられたアイデアとしては、ボトムアップの学際的観点から研究プロジェクトを促進する、資金提供機関に働きかける、研究課題に学際性を盛り込む、特定のテーマ(気候と水についての特別レポートなど)を定めてそれを立案する、社会科学がそこに転換点を見出せるような、新たな科学への影響を探る、コミュニティに赴く(フィールド調査)、政策運営のような中立地を見つける、ミーティングを中心となって進める、コミュニティにもとづいた科学的課題を策定する、適切な方針書を作成する、といった手順が検討されました。

持続可能な北極に挑戦していく上で求められる協力体制にとって、このワークショップはすばらしいスタートになりました。この機会によって、自然科学と社会科学の間の橋渡しが出来ただけでなく、カナダと日本の間の協力関係を促進することにもなりました。

池 直美/北海道大学・公共政策大学院(HOPS)講師

(テーマ7実施担当者)

ヴィクトリア大学アジア太平洋イニシアチブセンター ヘレン・ランズドーン センター長による開会の辞

ワークショップ後の渡辺佑基准教授(国立極地研究所)と池直美講師(北海道大学 HOPS)