ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

日本ノルウェー北極科学イノベーション週間 2016 (ASIW2016)

ASIW2016集会が6月2日、3日に東京で開催されました。ノルウェーと日本の、科学・技術でのこれまでの長期間にわたる協力が、この集会につながっています。

1日目のオープニングセッションでは、ノルウェー大使の歓迎挨拶と文科副大臣の開会宣言に続いて、ノルウェー研究協議会国際課長と海洋地球課長からノルウェーと日本の北極研究ポリシーがそれぞれ説明されました。キーノートとして、日本からは「我が国の北極政策」を踏まえて科学研究を推進するプロジェクトであるArCSと、北極-アジア太平洋間の気候的なつながりについて紹介しました。ノルウェーからは北極のもつ経済的な可能性と、教育、研究、イノベーションの関連についての紹介がありました。

午後には5つのセッションが開かれました。各セッションのテーマは(1)海洋研究(海運)と社会、(2)海洋環境と資源マネージメント、(3)北極気候システムとテレコネクション、(4)気候要素と南極の役割、(5)北極サステナビリティのためのエネルギーとインフラで、それぞれ10を超える発表が行われました。陸域を含めたエコシステム変化についてはテーマ(3)で扱われ、(5)以外のセッションについては、翌日の午前中にも議論が引き継がれました。

2日目の午後には全体会合で各セッションのまとめが報告され、引き続いて教育(EDU)、技術開発(TECH)、ノルウェーと日本の北極での協働の法的・政策的な将来像(POL)、観測システムとデータ共有(OBS)の4テーマでセッションが再構成されました(報告者はPOLとOBSのセッションに参加)。多くの研究者はOBSのセッションに参加して、それぞれの観測で得た経験や情報を共有し、データ共有を高い頻度で行うことを含む、ノルウェーと日本の間の研究協同の必要性が指摘されました。一方POLの議論は、自然科学研究だけでなく人文・社会科学研究も含むArCSの視点からは非常に興味深いものでした。

この会合を通じてノルウェーと日本の科学的な協働について、次のような感想を持ちました。すなわち、北極域に関する題材のほとんどはノルウェーの得意かつ重要事項であり、それはノルウェー研究者の素晴らしくかつ洞察に富んだ発表からもうかがえます。しかし、ノルウェー全体としては、こうしたノルウェーが重要と考える北極域に関する問題が、より国際的、全球的な問題として扱われることを望んでいるように思えました。日本から提案される科学テーマはより全球的な(赤道域も含め)ものであっても良いのかもしれません。

深澤理郎(ArCS PD)

2日目のプレナリ―セッションの様子