2016年9月19~21日の3日間に渡り、米国ポートランド州メインにて開催された北極評議会PAME(Protection of the Marine Environment in the Arctic)ワーキンググループ総会に参加してまいりました。
PAMEは北極評議会の6つのワーキンググループのひとつで、北極の海洋環境の保全に関わる政策と非事故時の環境汚染防止措置(陸域・海域起源を問わない)について活動しています。その代表的な活動の一つがArctic Marine Shipping Assessment(AMSA)で、北極の海上交通の歴史・法制・環境保全・現状および将来予測に関する報告書が2009年に公開され、その後も継続的に更新されています。AMSAの最近の活動は、極海の船舶運航規則、重油燃料の使用、客船の安全、地域住民と環境の保護、特別指定海域、外来生物種問題など多様なものとなっています。今後計画されている活動の中では、船舶航行情報(Arctic Ship Traffic Data)の収集システム開発において、北極海を航行する船舶の軌跡などを衛星リモートセンシングで収集・分析し、航行安全・環境保護・政策決定支援に生かすことのできる情報の提供が検討されています。
また海洋環境保護の取組みへのエコシステム・アプローチ導入に力を入れており、北極海のLarge Marine Ecosystem(LME)海域を基盤に、エコシステムの調査・記述・評価・保全目標・管理に渡る一連の手法に関するガイドライン作成を目指して活動しています。並行して、変わりつつある地球環境のもとで海洋保護区(Marine Protected Area: MPA)の機能を動的かつ複合的なネットワークとしてとらえる新しい管理手法について、検討が進められています。PAMEはこのほかにも多岐にわたる活動を展開していますが、一連の活動の根底には、地域社会・地域住民・伝統的な文化や知識を尊重すると同時に、積極的に先進的な技術や管理に導入しようとする姿勢が重要視されています。
ワーキング総会では、こうした活動の進捗報告、次回の2017年閣僚会合への報告内容、フィンランドが議長国となる2017-2019年における活動計画が審議されました。
大塚 夏彦・北海道大学(テーマ7実施担当者)