ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

AMAP 30th Working Group meeting参加報告

AMAP Working Group第30回会合が2016年11月28日から12月1日までの間、フィンランドのヘルシンキで行われました。AC正式メンバーである北極圏8カ国と先住民団体6団体のうち3団体に加えて、日本をはじめとするオブザーバー国(12カ国中6カ国)や関係団体(PAME, CAFF, EPPR, IASC, WWFなど)が参加しました。

今回の会合の主な目的は、1)2017年AC閣僚級会合に向けたアセスメント報告書の承認と、2) 2017-2019のWork planに関する議論と合意でした。一般的にAMAPでまとめられる報告書は、専門家である研究者が記すTechnical Reportと、その主執筆者グループとScience writerで取りまとめるSummary for Policy maker (SPM)版があります。今回の会合では、特に5つの報告書(SWIPA(Snow Water, Ice, and Permafrost in the Arctic), CEAC(Chemicals of Emerging Arctic Concern), AACA(Adaptation Action for Changing Arctic), ARR(Arctic Resilience Report), AOA(Arctic Ocean Acidification))について、SPM版(もしくはこれに準じるもの)の進捗状況や内容に関する多くの議論が行われました。その結果、出されたコメントに対応するための作業を事務局や主執筆者グループ・Science writerらで更に行う必要が確認されました。その作業の結果は2016年内もしくは2017年初め頃まで進められ、これに対する確認を行った上で承認することとなりました。

AMAP 2017-2019 Work Planについては、先の報告書に関する議論に多くの時間が割かれたため、計画案の概要説明と、参加国・機関からのコメントが行われるにとどまりました。計画案には、汚染物質(Mercury, POPs, Radioacivity, Oil & Gas, SLCFsなど)・環境変化(SWIPA, AOA)・AACA・Human Health・Communication and Outreachなどのテーマがあり、今後どのように進めていくか(報告書の更新をいつまでに行うかなど)に関する案が紹介されました。しかしながら合意に必要な十分な議論は行われなかったため、こちらについても今後は事務局の方でコメントを受けてWork Plan案の修正を行い、年明けにもオブザーバーを含めたAC関係国・団体に修正案が送られることとなりました。そして更なるコメントと修正を行った上で承認され、2月初めの高級北極実務者会合に提出される予定になります。

日本からは、Item 12「オブザーバーからの情報」においてAMAPと関係する日本の活動の紹介(これまでの発表からのUpdate)を菊地が行いました。具体的には、昨年度まで行われていたGRENE北極研究事業の成果の概要紹介、2015年9月から始まったArCSプロジェクトの概要紹介、そしてAMAPで行っているプロジェクトなどへの日本の貢献のまとめを発表しました。2013年に始めてAMAP WG会合に参加し日本の活動を報告して以降、日本からは継続的にAMAP及びACに関する活動の報告を行っています。このようなオブザーバー国は日本以外にはなく、今回の発表についてもAMAPのChairや事務局、ホスト国であったフィンランドをはじめAC各国代表から、感謝の意と今後の活動への期待が表明されました。これはAC国や関係国・機関に対して日本のプレゼンスを示すという意味からも大きな成果と言え、来年度以降も継続していくべきと考えます。

今回の会合に合わせて、AMAP 25th anniversary seminarが開催され、AMAP WG会合の参加者のみならず、これまでAMAPの活動に関わってきた多くの関係者が参加されました。

なお次回のAMAP WG会合は、アイスランドがホストとなることが決まりました。2017年秋頃にレイキャビックにて開催される予定です。

菊地隆・JAMSTEC(テーマ4実施責任者)

The 30th meeting of AMAP WGの様子