ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

ASSW 2016参加報告

2016年3月12日から18日までArctic Science Summit Week 2016(ASSW 2016)が米国Fairbanksにて開催され、日本からは国立極地研究所、海洋研究開発機構、北海道大学などのArCS関係者を含む合計50名が参加しました(参加者数としては米国に次ぎ2位)。期間中、ASSWのビジネスミーティングに加えて、Arctic Observing Summit 2016(AOS 2016)、Model Arctic Council(モデル北極評議会)、北極高級実務者(SAO)会合が同時に開催され、参加者1000名を超える規模の大きな学会となりました。

ASSWのミーティングとしてはInternational Arctic Science Committee(IASC,国際北極科学委員会)の各WGとCouncil会合が開催され、活動報告や予算の議論に加え、今後数年間の戦略的計画(Strategic Plan)について議論が行われました。

同時開催されたAOSは、北極の国際的な観測ネットワークの長期的維持のために、デザインやコーディネーションを議論することを目的としている隔年の会議ですが、通算で3回目となった今回、研究者と「ステークホルダー」(=政策決定者、研究資金提供機関、産業界、現地住民など)が一同に会して必要なアクションを議論する、という形がようやく定着し(受け入れられ)つつある、という印象を受けました。

例えば上記のような「ステークホルダー」を含むメンバーで行われた「北極のモニタリング的な観測を研究ベースからオペレーショナルなものへ移行させるために何が必要なのか」という議論や、資金提供する側からの「北極の観測に関わる研究プロジェクトへの資金提供の仕方は現状のような(数年スパンの)形態で良いのか」という問いかけなどがあり、プロジェクトベースで行われている観測をどう維持するか、その成果をどう発信し活かしていくか、という問題意識が(日本を含めて)世界的に共通であることが感じられました。

今回は、大きな額のスポンサーがついていたことも印象に残りました。米国と(日本を含む)他国との仕組みの違いなど様々な背景はあるものの、北極環境の急激な変化に伴う課題が政治・経済を含む広い範囲の関心を集め、北極環境研究が純粋に科学の議論では閉じない世界になっていることを如実に反映しているといえるでしょう。

末吉哲雄(国立極地研究所・ArCSコーディネーター)