ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

北極圏監視評価プログラム作業部会(AMAP)第31回年次会合への参加報告

北極評議会(Arctic Council: AC)の作業部会の一つである北極圏監視評価プログラム作業部会(Arctic Monitoring and Assessment Programme: AMAP)の第31回年次会合が9月12-14日の間、アイスランドのレイキャビックで開催されました。AC正式メンバーである北極圏8カ国(カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、アメリカ合衆国)と先住民団体6団体のうち3団体(ICC(イヌイット極域評議会), AAC(北極圏アサバスカ評議会), and Saami Council(サーミ評議会))に加えて、日本をはじめとするオブザーバー国(12カ国中6カ国)や関係団体(PAME, CAFF, IASC, Arctic Economic Council, ICESなど)が参加しました。

米国がAC議長国を務めた2015-2017年の間(2017年5月まで)、AMAPではSWIPA(Snow, Water, Ice, and Permafrost in the Arctic)の環境影響評価報告書、AACA (Adaptation Action for Changing Arctic)-Cの3つのregional report (Barents, Baffin Bay and Davis Strait, and Bering/Chukchi/Beaufort)、CEAC (Chemicals of Emerging Arctic Concern) の環境影響評価報告書などの作成に取り組まれてきました。そして、これらの政策決定者向け要約版や概要版が4月にAMAPが米国ヴァージニア州レストンで行った国際カンファレンス“International Conference on Arctic Science: Bringing Knowledge to Action”において発表されました。これらの技術的/科学的背景となる報告書は、2017年末までに発表される予定です。今回の会合では、これらのAMAPにおいて進められている活動の進捗が紹介され再確認されました。本会合におけるこのほかの重要な案件として、1) 2017-2019 Work planの確認、2) 2018-2026を対象としたAMAPの戦略的枠組み(Strategic Framework)の改訂に関する議論の開始、がありました。AMAPでは2017-2019 Work planのもとで成果物の準備が進められ、環境影響評価報告書が今後も発表される予定です。

オブザーバーからの報告のセッションにおいて、日本のAMAPに関係した活動や貢献に関する報告を、菊地が行いました。特記として、日本はACオブザーバーとして承認された2013年以降、継続的にAMAP WG会合に参加し、AMAPに関係する活動やAMAPへの貢献を紹介しています。このようなオブザーバー国は他にはなく、日本のプレゼンスの向上に大きく貢献していると言えます。また我々の研究成果を元にして、日本の研究者がAMAPの活動(専門家グループでの議論や報告書作成)に貢献しています。例えば、SWIPAやAACAについては報告書作成に関して執筆者や査読者として貢献していますし、ブラックカーボン・メタンに関する専門家グループ(EGBCM: Expert Group of Black Carbon and Methane)にも日本人研究者が複数登録され、高精度観測やモデル研究に関する成果を元に議論に参加しています。これらのことから、AC国や関係国・機関からは、日本に対する感謝の意と今後の活動への期待が表明されました。これはAC国や関係国・機関に対して日本のプレゼンスを示すという意味からも大きな成果と言え、来年度以降も継続していくべきと考えます。

次回のAMAP WG会合は、サーミ評議会とスウェーデンがホストする形で、2018年9月頃に開催される予定です。日時・場所については今後決定されます。

菊地隆・JAMSTEC(テーマ4実施責任者)


AMAP 31st WG meetingの様子


AMAPの新しい議長(Ms. Marianne Kroglund (Norway)、左から3人目)と事務局関係者