ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

極域協力研究センター第3回シンポジウム「北極法秩序形成における非北極国/アクターの役割」の開催

神戸大学極域協力研究センター(PCRC)は、2017年12月7日から9日までの3日間、国際シンポジウム「北極法秩序形成における非北極国/アクターの貢献」を開催しました。PCRCは、北極における国際法政策課題を研究すべく、2015年10月に設立され、同年12月には北極国際法秩序の現状を俯瞰するシンポジウム(リンク先:英語ページ)、2016年7月には北極海における法秩序形成を論じる第2回シンポジウム(リンク先:英語ページ)を開催しました。

この2回のシンポジウムの研究内容は、近々、東信堂から日本語書籍として刊行されます。今回の第3回シンポジウムでは、これまでの研究を踏まえて、北極法秩序形成における日本や中国などの非北極国の役割に焦点を当てて考察しました。国内外から各分野の専門家、実務家を招へいして報告・議論を行い、主に日本の学界、政府関係者(在京大使館関係者含む)、大学院生など計77名の方に参加いただきました。

このシンポジウムは、4つの基調講演と6つのセッションから構成されました。初日は、国際海事機関(IMO)前事務局長の關水康司氏による極海コード(Polar Code)の意義に関する基調講演に続いて、北極海運ガバナンスや北極海中央部での漁業協定交渉における非北極国の役割について議論しました。2日目は、国連先住民族問題常設フォーラムの元議長Dalee Sambo Doroughアラスカ大学准教授の北極先住民に関する基調講演に続き、非北極国の活動が北極先住民にあたえる影響について、また北極海洋科学の政策的意義づけについて海洋学者と共に議論しました。最終日は、井出敬二北極担当大使による日本の北極政策に関する基調講演とTimo Koivurovaラップランド大学北極センター長による北極ガバナンスにおける非北極国の役割に関する基調講演に続き、北極評議会におけるオブザーバーの役割や北極法秩序形成におけるアジア諸国の貢献について議論を交わしました。PCRCのシンポジウムは討議の時間が長いのが特徴で、報告者、ディスカッサント、聴衆との活発な議論を経てより深い考察を得ることができました。

今回のシンポジウムの成果は、英語の書籍として出版されます。特に今回のシンポジウムでは、数少ない北極先住民族の法学系研究者の参加を得て、彼らの視座をPCRCの北極国際法研究に取り込むことができたこと、そして若手研究者をロシアや中国、ポーランドなどから招へいして研究報告をしてもらい、世界の北極国際法政策研究の底上げに貢献できたことが重要であったと考えます。

柴田明穂、稲垣治(ともに神戸大学/テーマ7実施担当者)


スピーカーおよびディスカッサントの集合写真


シンポジウムにおける討議の様子