本年の北極サークルでは10月14日にJapan Night(日本主催のパーティーイベント)が行われました。それに先立って、同じ会場でより学術的なJapan Sessionを17:30から19:00にわたって開催されました。テーマはThe Arctic as the Field of SDGsとし、科学的研究が持つ北極域の持続的発展への貢献を議論しました。セッションは小職の解題と井出北極大使の挨拶に続いて、自然環境全般の予測に関して羽角教授が、社会経済の側面から北極航路活用について大塚教授が、自然環境の変化と先住民の生活様式の変化について高倉教授がそれぞれまとめを行いました。それを受けてLarry Hinzman教授(University of Alaska, Fairbanks, UAF)とICE-ARCコーディネーターのJeremy Wilkinson教授(British Antarctic Survey, BAS)がArCSを中心とする日本の北極研究についてコメントし、参加者からの質問、議論の時間を持ちました。
コメンテーターの両氏からは、科学を先頭にして日本が北極問題に多数の分野で組織的に関与し、北極の持続的発展をテーマとしている点への高い評価をいただきました。参加者はおよそ100人を数え、質問、議論の時間には、特に気候変動予測の確かさと現在の観測結果とのつながりに関して、また先住民コミュニティの将来について、質問と意見がのべられていました。特に予測と観測への質問、意見は、北極域の現場観測について、その情報共有やデータ流通に多くの人々が強い関心と期待があることの現れと考えます。なお、このセッションと同じ時間に、10を超える数のセッションが行われていたにもかかわらず多くの聴衆の参加を見たのは、SDGsを背景に異なる分野の話題が展開されていたことが大きな理由になっている可能性が高いです。非北極国の日本らしい北極研究とは北極域での社会的、経済的な活動と北極環境の相互関係を、科学的な観点から冷静に論じていくことなのではないでしょうか。
深澤理郎(ArCS PD)