ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

持続可能な北極観測網の構築に向けた極域予測年の役割

Arctic Observing Summit(AOS)が、2018年6月24日から3日間、スイスのダボス国際会議場で開催されました。

AOSは、現在ある北極の観測網がなぜ重要で、維持・発展させる必要があるか、そして持続可能な北極観測システムの構築へ向けた将来の方向性を議論するための国際会議です。筆者はこのAOSにて、「予測のための観測」というパネルでパネリストとして登壇しました。予測を高精度に行うためには数値モデルの開発の他に、観測によって予測のための良質な初期値を準備する必要があります。2017年5月から2年計画で進行中の極域予測年(YOPP: Year of Polar Prediction)では、観測史上最大規模の大気・海氷・海洋観測が北極域で展開されます。これによって、北極域そして中緯度域の気象予測がどの程度改善するのか、どの観測が効果的なのかが網羅的に調べられる予定です。パネルディスカッションでは、以下のような点を議論しました。

  1. 北極の観測データが予報の現場でどのように利用されているか
  2. 季節予報にはどのような北極域の観測が必要か
  3. 天気予報の利用者が持続可能な北極観測に貢献できること
  4. 北極域の観測活動と先住民との関係
  5. YOPPレガシーに向けたAOSの活動

このような議論を通じ、観測と数値モデルの融合について真摯に向き合っている YOPP の活動を、聴衆(利用者側)に伝えられた意義は大きいと思います。

猪上淳/国立極地研究所(テーマ1実施責任者)


パネルディスカッション