ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

平成29年度若手研究者海外派遣報告: 北極海の入り口、フラム海峡の動物プランクトンの季節変化

私は2017年3月3日から5月31日にかけて、ドイツのAlfred Wegener研究所 (AWI) にArCS若手研究者海外派遣支援事業の助成を受けて滞在しました。私の滞在したブレーマーハーフェンという町はのどかな港町で、近郊を流れるウェザー川のほとりでは人々が毎日集まってお酒や散歩を楽しみ、非常にのんびりとした時間を過ごしていました。

私はこのAWIでセジメントトラップという海洋観測機器を用いた研究を行ってきました。セジメントトラップは設置と回収だけでおよそ1年もの間、決められた間隔で水柱内の沈降粒子を採集してくれる優れた海洋観測機器で、北極海や外洋域など、海氷が発達していたり、遠方のため船を用いた高頻度のサンプリングが困難な海域で使われています。近年、このセジメントトラップによって採集された動物プランクトン試料を解析することによって、動物プランクトン群集の季節変化を評価することが可能であることが分かっています。

今回の研究では大西洋側の北極海への入り口である東部フラム海峡に係留しているセジメントトラップの解析を行いました。このフラム海峡は近年、地球温暖化の影響により北極海へと流れる海流の海水温が上昇していることが報告されており、この海水温の上昇により北極海の生態系が変化すると考えられています。今回の解析からも動物プランクトン群集の季節変化がこれらの海流の影響を大きく受けている可能性が示唆されました。

今回のドイツへの滞在で、受け入れ先の研究者と英語で討論を行って英語感覚を養ったり、ミーティングに参加することで新しい知見を得たりすることができました。また、研究所の方の誕生日パーティーに参加するなどドイツの一般的な文化に触れることもできて海外渡航経験のほとんどなかった自分にとって毎日が新鮮味にあふれており、今後の人生において非常に有意義な経験をすることができました。最後に、此度のドイツでの研究を支えてくださったすべての皆様およびArCS若手研究者海外派遣支援事業の援助に深く感謝いたします。

徳弘航季(北海道大学)


アルフレート・ヴェーゲナー研究所 (AWI)


ウェザー川のほとりにて