ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

ロシア ケープ・バラノバ基地訪問

ケープ・バラノバ基地は、ロシア北極海のセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島ボリシェヴィク島(79°18'N 101°48'E)に位置し、ロシア北極・南極研究所(AARI: Arctic and Antarctic Research Institute)が維持運用する観測基地です。1980年代に開設され、1990年代に一旦閉鎖されましたが、2013年8月に再開されました。国立極地研究所や東京大学をはじめとする日本の研究機関とAARIとによる大気分野の共同観測を開始するにあたり、設備の視察も兼ねて2017年11月に現地を訪問しました。

ケープ・バラノバ基地を訪れるため、まず、中央シベリアのクラスノヤルスクを経由して湾岸の町ハタンガに入りました。ハタンガからは、AARIがチャーターしたヘリコプターで約4時間かけてボリシェヴィク島北端の基地に移動します。ヘリコプターの運航は基本的に年5回(4月、5月、7月、9月、11月)で、その他、大規模な人員の入替や物資の運搬のために年1-2回ほど砕氷船の運航があるとのことです。

基地には、最大50人が滞在できる居住棟や食堂棟、医療棟、発電棟、実験棟、倉庫など20棟ほどの建物に加え、各種観測用の小屋が約1km四方に点在しています。研究者や技術者のほか、医師や調理師が年間を通して駐在し、気象、海氷、海洋、氷河などの観測が実施されています。

訪問した11月下旬はすでに極夜に入っていたため、昼間でも太陽が昇りません。真っ暗な中で凍結した地面を移動するのは大変でしたが、ArCSの研究チーム(代表:小池真 東京大学准教授/テーマ3PI)が新しく設置したブラックカーボンを測定する機器のために建てられた観測小屋をはじめ、AARIやその共同研究機関によって実施されている各種観測の様子も見ることができました。

北極海航路上の要衝に位置しながら観測データの少ない地域であること、日本の観測基地があるニーオルスンと同緯度帯にあることなどから、ケープ・バラノバ基地での日本の観測活動の拡大が期待されます。

兒玉 裕二(国立極地研究所/国際連携拠点の整備メニュー実施担当者)


基地に移動するヘリコプター内の様子


日本のブラックカーボン測定装置を設置するために新しく建てられた小屋


ラジオゾンデの放球の様子