ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

「みらい」における海水飛沫/船体着氷観測(みらい北極航海2018)

我々のチームでは寒冷海域の利用で問題となる船体着氷の発生予報やメカニズム解明を目的として、海水飛沫/船体着氷の観測を行なっています。

船体着氷は雪と海水飛沫が混じり合うことによって急速に成長します。船が凍ると、作業がしにくくなるだけでなく、船が正常な体勢に戻るための力、復原力が低下することが知られています。ひどい場合に除氷作業を怠るとトップヘビーになり、転覆の可能性すら出てきます。

この船体着氷を予測するためには、海水飛沫の発生予測が必要となってきています。しかし、航行中の船において海水飛沫が起こりやすい条件は現在あまりよくわかっていません。したがって、寒冷海域を安全に有効活用していく上で海水飛沫に関する研究は必要不可欠です。近年の北極海における資源探索や航路開通の期待の高まりにより、その重要度は高まってきています。

今航海において我々は、特に大型船舶における飛沫発生が起こりやすい海象・気象などの条件を明らかにするとともに、海水飛沫が起こりにくい操船方法を明らかにするため、海洋地球研究船「みらい」に飛来した飛沫量を取得するためのセンサーを設置して観測を行なっています。また、着氷が発生した際にはサンプルを取得し、サンプルの構造解析や、起源(海水か積雪か)を明らかにするために酸素同位体比分析を行います。今回は寒冷海域を長期間航行するため、船体着氷の予防・予測に役立つ多くのデータが取得できることを期待しています。

伏見修一(東京大学大学院)


凍りついた投錨装置、ひどい時は錨が下ろせなくなります


発生した飛沫量を計測するための粒子計測センサー