ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

平成30年度若手研究者海外派遣報告:北極サークルに参加して

レイキャビク(アイスランド)で10月に開催された「北極サークル」に参加しました。

北極サークルはグリムソン・アイスランド前大統領等により2013年に設立され、政府関係者、研究者、ビジネス関係者等、約2,000名が集まる国際会議で、北極版ダボス会議とも言われます。毎年10月にレイキャビクで開催されており、本年は10月19日から21日までの開催でした。

会議には日本より河野外務大臣が日本の外務大臣として初めて出席し、我が国の北極政策に関する基調講演を行いました。日本の外務大臣がはるばるアイスランドまで来たこともあり、基調講演は大変注目されましたが、河野大臣は北極の持続可能な経済利用の探求に向けた機会として、北海道がアジアから北極海航路へのゲートウェイに位置しており、より多くの企業が北極ビジネスに関心を向けるよう政府として奨励したいと発言しました。北極関係者への北海道のプレゼンスを高めるという点で、非常にありがたい後押しをいただきました。

会議では全体会合や分科会を通じて様々な議題について活発な議論が行われましたが、ここでは欧州とアジアをつなぐ「北極版シルクロード」に関する分科会について紹介します。主に北極海航路を中心とした物流について議論が行われましたが、スピーカーとして登壇した北極経済評議会のヒーダー・グジョンソン副議長からは、海運に加え情報通信においても北極版シルクロードの可能性は大きいとの発言があり、その素地として、ノルウェー北部が世界的データセンターの集積地となっていること、そして北極海を通じて欧州とアジアを結ぶ海底データケーブル敷設計画について紹介がありました。

加えて、グジョンソン副議長からは、気候変動問題が世界的に注目される中、グーグル等の巨大企業も二酸化炭素排出削減に積極的に取り組んでおり、冷涼な気候によりデータセンターの運営に不可欠な冷房費用が大幅に削減できる北極圏では、新たなビジネスの可能性が期待できるとの発言がありました。北海道も冷涼な気候を活用したデータセンター誘致の取組を進めており、北極圏における先進的な取組は今後の施策を検討する上で大変参考になりました。

一連の議論を通じて、北極圏の可能性を確かに感じることができました。最後に、今回このような貴重な機会を与えていただいた、北海道大学北極域研究センターの皆様に感謝の言葉を申し上げ、今回の派遣事業の報告とさせていただきます。

岡部善尚(北海道庁)


河野大臣の基調講演


ArCS分科会での北海道大学北極域研究センター大塚教授によるプレゼンテーション