ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

平成30年度若手研究者海外派遣報告:PhD School on Ice Core Analysis Techniquesへの参加

気候変動のより正確な予測のためには、過去の気候・環境の変動の歴史を知ることが重要です。氷河や氷床を掘削して得た氷(アイスコア)の成分や内部に含まれる不純物・気体の分析を通して、過去の気候や環境を復元するための情報を得ることができます。

私は北極域の過去の気候・環境を復元するため、グリーンランド氷床で掘削されたアイスコアに含まれる固体微粒子の分析を行っています。アイスコアの成分や不純物、気体等の他の分析方法やそこから得られる情報について学ぶため、デンマークのコペンハーゲン大学で開催されたPhD School on Ice Core Analysis Techniques (ICAT PhD School)に参加しました。

ICAT PhD Schoolは、博士課程の学生や博士研究員等の次世代のアイスコア研究者がアイスコアの分析方法や分析データの解釈に関して基礎から応用までを学ぶことを目的として行われました。また、将来、協力して研究を進めるための基盤を築くための参加者間の交流もこのコースの目的でした。今回は、コペンハーゲン大学等でアイスコア研究を行う専門家たちが講師を務め、受講者として様々な国から計27名が参加しました。

このICAT PhD Schoolでは6日間の日程で講義、参加者同士の議論、実際のデータを使った演習、分析装置の見学等が行われました。どれも非常に濃い内容で、アイスコアの分析に関して多くの新たな知識を得ることができました。各分析やその分析データに基づく気候・環境復元に関する最新の研究の動向を知ることができたことや、研究内容が近い参加者と議論することもでき、大変刺激的な6日間でした。

今回ICAT PhD Schoolで学んだことを現在の私の研究に生かし、詳細な北極域の気候・環境復元を目指すとともに、同世代のアイスコア研究者とのネットワークを生かして今後さらにグリーンランドアイスコアを通した北極域の気候・環境復元の研究を盛り上げてゆきたいと思います。

繁山 航(総合研究大学院大学/テーマ2研究協力者)


年代学の授業。グリーンランドアイスコアから得られた約12万3千年にわたる過去の気候変動の記録を示すため、廊下で授業を行う一面も。


全員集合写真(Odsherred地域への遠足の際に撮影)。