ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

ニシオンデンザメの生態調査

今年の8月にカナダの北極域にあるTremblay Soundという入り江を訪れ、ニシオンデンザメの生態を調査してきました。この場所ではカナダの水産海洋省(Fisheries and Oceans Canada)が中心になり、Ecosystem Approach in Tremblayという大掛かりなプロジェクトを展開しています。プランクトンから魚類、鳥類、はたまた海生哺乳類に至るまで、いろいろな海洋生物を同時に調査することによって北極の海洋生態系を総合的に理解しようというプロジェクトです。

その一環として私はウィンザー大学のNigel Hussey博士らとともにニシオンデンザメを捕獲し、各種の記録計を取り付けて放流する実験を行いました。毎日ボートで海に出て、針の六つ付いた仕掛けに餌を付けて投入するのですが、魚影は相当に濃いようで、毎回少なくとも1匹、多い時で4匹のサメがかかっていました。ただし、複数のサメがかかったときにはだいたい共食いが始まっており、腹を食われた死骸がごろりとボートの上に上がってきました。現地に滞在した2週間の間に、計10匹のサメに記録計を取り付けて放流することができ、そのすべてからデータを得ることができました。今後、データを解析してニシオンデンザメの知られざる生態を明らかにし、論文にまとめていきたいと思います。

渡辺 佑基(国立極地研究所/テーマ6実施担当者)


キャンプ地の様子


シャチ、イッカク