ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

北極圏監視評価プログラム作業部会第32回年次会合・参加報告

北極評議会(Arctic Council: AC)の作業部会の一つである北極圏監視評価プログラム作業部会(Arctic Monitoring and Assessment Programme: AMAP)の第32回年次会合が9月25-27日の間、スウェーデンとSaami Council(サーミ評議会)がホストを務める形で、スウェーデンのキルナで開催されました。AC正式メンバーである北極圏8カ国(カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、アメリカ合衆国)と先住民団体6団体のうち3団体(ICC(イヌイット極域評議会)、 AAC(北極圏アサバスカ評議会)サーミ評議会)に加えて、オブザーバー国6カ国(仏・独・伊・日・蘭・韓)や関係団体(EC, IASC, UNEP, UArctic, WMO)が参加しました。

今回の会合では、これまでの会合で議論されたAMAP Workplan 2017-2019に則って現在進められているAMAPの主要2テーマ、汚染(Pollution)・気候(Climate)、に関する監視/評価についての様々な活動の進捗状況を確認するとともに、次の2019-2021期間のWorkplanに関する議論が行われました。また継続審議されていた2018年からのAMAP Strategic Frameworkについての議論が行われました。AMAP Strategic Frameworkについては、近いうちに取りまとめられ公開されることとなります。

AMAPからはこの数年多くの報告書が出されています。この会合においても、Arctic Ocean AcidificationとBiological Effects of Contaminants on Arctic Wildlife and Fishの2報に関して最終的な確認が行われ、会合の後、10月にそれぞれ公表されました。また、Mercury(水銀)や、マイクロプラスチック、海洋ゴミ(debris)などについても注目しており、他のAC作業部会とも協力して作業を進める計画です。参加国・団体に対しては専門家の推薦が求められていました。

Climate(気候)に関する議論では、パリ協定やIPCCが取りまとめるSpecial reportとも関連して、AMAPからも先に発表されたSWIPA 2017報告書などを元として気候変化とその影響に関する議論やとりまとめに貢献する方針が示されました。そして、11月上旬にAMAP Meteorological and Climate Workshopをコペンハーゲンで開催することを承認し、そこでClimate EG(気候に関する専門家グループ)のもとでIPCCやパリ協定への貢献や、今後のAMAPにおける気候に関する活動についての議論を行うこととなりました。日本からは、新潟大学の浮田教授が参加する予定です。これまでと同じように、AMAP事務局および参加国から、日本のAMAPへの貢献に対して感謝の意が示されるとともに、継続的なAMAPの活動への参加に対して期待の声が寄せられました。ArCSにおける研究活動とその成果を元に、またそれ以外の北極に関する活動を踏まえたうえで、AMAPの活動に加わることができれば、日本のプレゼンスの向上に繋がると思われます。

なお本会合に先立って、前日の9月24日午後にキルナから北西に離れたノルウェー国境近くのアビスコにあるAbisko Scientific Research Centerへの見学会が行われ、これにも参加しました。この研究施設では、20世紀初めからの気象などに関する観測データを有しており、これを用いた長期気候変動に関する研究やその生態系への影響を調査しています。この見学会では、それらの研究紹介が行われるとともに、近くにある永久凍土の観測サイトにも行ってその観測状況を見ることができました。

菊地隆(JAMSTEC/テーマ4実施責任者)

AMAP 32nd Working Group meetingの様子

Abisko Scientific Research Center訪問(Permafrost monitoring site見学)の様子