ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

アラスカ・アンカレッジで開催された北極圏動植物保全(CAFF)作業部会役員会議について

今回はアメリカが議長国となって4回目の会合でした。議長国は2年で交代しますので、今回がアメリカにとって最後の役員会議となります。会議はアラスカのアンカレッジからバスで20分ほど離れたThe Alaska Native Heritage Centerで行われました。ここには、先住民の文化や生活に関する博物館や集会施設がありました。敷地内には伝統的な住居もいくつか建てられており、内部の様子も見ることができました。また、保育園も併設されているようで、会議初日はアンカレッジで有名なマッシャー(犬ぞり使い)が10頭程度の犬を連れてきており、会議中に子供を犬ぞりに乗せ、施設の周りを回っていました。会議参加者は生物好きが多いので、会議中は「チラ見」で我慢していましたが、休憩時間になった途端、多くのメンバーが、犬ぞりに乗って楽しんでいる子供達を羨ましそうに眺めていました。

さて、会議では、アメリカが議長国として努めた2年間の総括、周北極における海洋、陸域、沿岸、淡水における生物多様性モニタリングプログラムの成果のとりまとめ、昨年の秋フィンランドで開催されたArctic Biodiversity Congress 2018が大盛況であったため、次回も4年後に会議を開催する方向で調整に入ること、サーモンピープルなどいくつかのプロジェクトがとりまとめの段階に入ってきたため、報告書を完成させるためのロードマップの確認作業などを行いました。

一方、前回は北極科学委員会(IASC)とCAFFが連携し、北極域について勉強・研究している学生や若手研究者の会(Association of Polar Early Career Scientists)から2名をCAFFに招待し、CAFFの活動を実際に体験してもらうことが紹介されましたが、今回はIASC自体から活動紹介が有り、IASCのプロジェクトでCAFFに貢献可能なものが少なからずあることについて実例を挙げながら紹介しました。これが実現すると、オブザーバー国の研究者はCAFFのエキスパートグループに入り込まなくても、IASCのプロジェクトメンバーとしてCAFFへ貢献できることになるため、オブザーバー国である日本にとっては、CAFFへの貢献の窓口が広くなる可能性があります。今後のCAFFとIASCとの関係(連携)を注視する必要があります。

CAFFの次期議長国はスウェーデンです。CAFFの役員会議は基本的に先住民との懇親を深めることおよび先住民の生活環境や周囲の自然環境を視察する目的で、先住民の居住地で開催することを重要視しています。しかしながら、冗談かもしれませんが、スウェーデン代表の挨拶では予算が大幅に削減されたため、次回の会議の開催場所はストックホルムになるとのことでした。環境変動に翻弄されている脆弱な北極ですが、CAFFなどの北極評議会の作業部会でさえ、北極国から安定したサポートを常に受けられるわけでは無いことが認識できました。

内田 雅己(国立極地研究所/テーマ6実施担当者)


会場となったThe Alaska Native Heritage Center。


犬ぞりに引かれ楽しんでいる。


会議の様子。


先住民の伝統的な家屋の見学。


部屋の中の様子。手前にスノーゴーグル、奥にはアザラシで作成した浮きが置いてある。