ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

報告:国際ワークショップ 東北大学知のフォーラム 東北アジアの大陸地殻安定化と人類の環境適応 ワークショップ4:人・動物・地理の相互作用としての北方的食糧確保とドメスティケーション

東北アジア地域は、北半球の寒極が含まれ、人間が暮らす場所としては地球で最も寒冷な地域の一つです。熱帯アフリカで生物進化をとげたはずの人類はどのようにしてこの厳しい環境に適応するようになったのでしょうか。この点で鍵となるのは文化適応です。人類の行動や観念は、移動自体も含めて人間—環境の相互作用の結果として形成され、さらに変化していきます。人間の文化適応は不可逆的な単なる環境決定論なのではなく、ある条件の社会生態体系における蓋然性によって定められる複合的な進化的事象のある過程とみることができます。このような認識のもと、このプログラムが目指すのは、関連する研究者の国際的共同において知識の交換をすることであり、そのことによって東北アジア地域の地球科学、生物学、考古学、人類学を総合化し、新しい文理融合の地域研究の可能性を探ることにあります。

プログラム「東北アジアの地殻安定化と人類の環境適応」を構成する本ワークショップは、東北大学東北アジア研究センターの高倉浩樹教授と、フィンランド・ラップランド大学北極センターのステムラー教授との共同で企画されました。国内外の12名(海外大学からは7名)の発表者で構成され、2019年2月21日と22日に東北大学でおこなわれました。北極域独自に形成された文化適応の実態が、考古学・人類学から提示されるとともに、動物遺伝学からは家畜化が、文化伝播と地域進化双方で行われて来た可能性が議論されました。

本ワークショップを通しては、ロシア北極域の先住民文化研究を国際的に先導する海外の研究者のキーパーソンと国内の研究者を一同に介することができ、日本の北極域研究者との共同研究の可能性を示すことができました。また、人類学の問題意識にもとづく学際的北極域研究であったため、畜産学・動物福祉学・海洋生態学などの国内研究者も参加しそれぞれの交流を作るきっかけにもなりました。

田中利和(東北大学/テーマ7実施担当者)


ワークショップの様子(知のフォーラムFacebookページより)