ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

2019年度若手研究者海外派遣報告:温暖化したときに緑になりやすい北極圏ツンドラはどこ?

”Arctic Greening”という言葉をご存知ですか?気温上昇などにともない、北極圏に生える植物の背丈が高くなり、宇宙などから見たときに、過去よりもより緑色になって見える(Greening)ことで、近年、北極圏で見られている現象です。

一方、Greeningの程度には場所によって「ばらつき」がありますが、その「ばらつき」が生まれる理由は分かっていません。本研究では、ツンドラにおいて「過去に起こった撹乱(生態系を大きく破壊するイベント)の種類」によって、気温上昇に対してツンドラ植物が示す反応は異なり、結果としてGreeningの程度が異なるのではないかと予想を立て、調査・研究を行ないました。研究地は、スウェーデン北部の北極圏ツンドラです。夏から秋には、ブルーベリーやコケモモが足元を覆い尽くす美しい場所です。このツンドラにおいて、氷河が地面を削った後に侵入した植物と、永久凍土が存在するために、土壌が凍結融解に伴って撹拌された後に侵入した植物を対象に、温暖化に伴う土壌養分が増加する影響を比較しました。調査の結果、土壌養分の増加は、永久凍土上地帯で土壌が凍結融解によって攪拌された後に侵入した個体へより大きな影響を及ぼすことが明らかとなりました。この結果は、「過去に起こった撹乱の種類」が、ツンドラにおける”Arctic Greening”の程度が場所によってことなる重要な要因の一つとなっていることを示唆しています。

小林 真(北海道大学)


氷河の後退域での植物サンプリング


植物のシュートの長さを測る