ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

2019年度若手研究者海外派遣報告:デンマークにてアイスコアを学ぶ

北極域グリーンランド氷床や南極氷床は過去に積もった雪が氷となって保存されたものであり、氷床を掘削して、アイスコア(円柱状の氷)を分析することで、過去数十万年前までの地球環境を復元することができます。私は今年度からアイスコアに含まれる空気成分と雪氷の物理的特性に着目して、極域の氷床を対象にしたアイスコアの研究を始めました。そんな中2019年9月23~28日にかけてデンマークのコペンハーゲンで、これからのアイスコア研究を担う若手の教育を目的としたIce Core Analysis Techniques (ICAT)PhD school-2019が開催されました。また、9月30日~10月3日にはアイスコア掘削に関するInternational Ice Drill Symposium(IDS)が開催されました。そこで、アイスコア研究への理解を深め今後の研究を進めていくための下地を固めることを目的としてICAT、IDSに参加しました。

ICATはグリーンランド氷床における国際的な掘削運動を率いているコペンハーゲン大学のPhysics for Ice, Climate and Earth (PICE) at the Niels Bohr Institute (NBI)の主催で開催されました。スクールには約25人の博士課程学生とポスドク研究員、講義を行うアイスコア研究者が世界各国から集まりました。7日間の日程で講義と実験室見学やデータ解析などの実習が中心に行われました。講義では掘削の歴史、掘削技術に始まり、古環境の指標となるアイスコアの各成分(水同位体、ダスト、イオン、ガス等)についての基礎知識とその分析方法、最新の研究まで広く扱われ、アイスコア研究の全体像を把握することができました。ほかにもデンマークの氷床地形を巡検したり、PICEのアイスコア貯蔵庫を見学することができました。また、全日程を通して若手研究者間で交流を深め、将来の共同研究のためのコネクションを築くことができました。

IDSはコペンハーゲンのThe Royal Danish Academy of Sciences and Lettersにて開催されました。新しい掘削技術をはじめ、各国の掘削報告や今後数年の掘削計画の情報を収集することができ、私が今後の北極域での掘削計画に協力していくうえで有益となる経験になったと思います。

今回、大学院生活の早い時期にICATIDSに参加することができて大変有意義な経験ができたと感じています。活動を支援していただいたArCS若手研究者海外派遣支援事業、関係者の皆様に深く感謝いたします。ありがとうございました。

井上 崚(総合研究大学院大学)


ICATでの講義の様子


IDS開催祝賀会での氷山用UAVの披露会。人が近づけない氷山の動きを追跡するために,氷山を掘りGPSを配置できるUAVとのこと