私は、2019年度ArCS若手研究者海外派遣事業の支援を受け、ドイツのポツダムにあるアルフレッドウェゲナー研究所(AWI)に2019年11月27日から12月22日まで滞在しました。この派遣では、北極海用の高解像度大気モデルを開発するプロジェクト「Arctic-CORDEX」で開発されたモデルの性能を調べるため、「Arctic-CORDEX」の取りまとめであるAWIのRinke博士を訪問しました。
これまでの研究では、北極海の大気現象を調べるため、一般的に再解析データが用いられてきましたが、雲や放射などのスケールの小さい現象を再現するために解像度が十分ではありませんでした。北極の雲は、放射収支を通じて表面収支に影響するため、北極の気候を支配している要素の1つであることから、北極海の気候変動を理解する上で正確に再現する必要があります。そこで、小さいスケールの大気現象を正確に再現するため、北極海用の高解像度モデルが各国により開発されました。しかし、高解像度モデルによる再現性が評価されていなかったため、申請者が北極海で取得した観測データと比較を行いました。
派遣前半は、既に各国により提供されていた高解像度モデルの性能を調べた初期解析の結果をRinke博士と議論しました。派遣中盤は、AWIの高解像度モデルの開発者との議論を行い、高解像度モデルの構造や詳細の説明を受けました。日本でも同様に高解像度モデルを開発できないか議論を行いました。期間終盤は、これまでの滞在中の解析結果などをセミナーで発表しました。これまでの研究内容や今後の共同研究の議論も行い、滞在中の研究成果を論文にまとめる方針になりました。
今回の派遣では、既存の共同研究の議論だけでなく、将来的な共同研究の体制を構築することができました。また、研究だけでなく、休日には世界的に有名なドイツのクリスマスマーケットを見ることができ、ドイツの文化にも触れることができました。最後になりましたが、ArCS若手研究者海外支援事業の援助により、貴重な経験を得ることができました。関係者の皆様には深く感謝いたします。
佐藤 和敏・北見工業大学(テーマ1研究協力者)