レイキャビクで毎年60余国から2千人以上を迎え開催されるArctic Circle Assembly。今回は、日本セッションにゲスト参加するサハ共和国研究者のサポートと、渡り鳥保全に関する打ち合わせのため、ArCS北極関連会合専門家派遣枠で派遣していただきました。
アイスランドのÓ. R. Grímsson元大統領が立ち上げたArctic Circleは、毎年10月に開かれるAssembly(年次会合)と不定期開催のForum(地域会合)からなる北極に関わる世界最大の対話の場ですが、アイスランドが北極評議会(AC)議長国(2019-2021年)ということもあり、実質的にACの政策の社会実装の土台になっているとも言えます。
このArctic Circle AssemblyでArCSは毎年セッションを企画していますが、今年は初めて北極先住民とのダイアログを取り込み「Science Meets Society: Toward The Co-Designing of Arctic Research」と銘打った野心的なセッションが笹川平和財団のサポートで開催されました。そのゲストとして招聘されたのがロシア・サハ共和国で先住民文化の研究と権利獲得活動に携わるU. Vinokurova北方圏芸術大学教授。日本に詳しい彼女ならではの、非北極国と北極先住民が連携するヒント満載の議論でした。実はArctic CircleのセッションでアジアのACオブザーバー国が北極先住民を招聘したのは初めてのことだそうで、日本と同共和国の長い協働の歴史の成果とも言えるでしょう。
さて今回のAssemblyでは、随所で「非北極国の貢献」(の必要性)が謳われていました。今回の主用務であるCAFF(AC動植物相保全作業部会)事務局およびAMBI(AC渡り鳥イニシアティブ)との協議も、まさしくAMBIにおける日本の貢献の可能性を議論するものでした。国内ではあまり知られていませんが、日本の民間と行政による渡り鳥のモニタリングデータと環境教育活動は国際的に高い評価を得ています。AMBIはそこに注目し、その実績やノウハウを共有するワークショップの開催を日本に提案しています。
ところで初日のプレナリー(全体会)では、ASM3(第3回北極科学大臣会合)を今年11月に東京で共催すること、同時にArctic Circle Japan Forumも開催されることが、L. D. Alfreðsdóttirアイスランド教育科学文化大臣と三好真理北極大使からアナウンスされました。その後開催されたAlfreðsdóttir大臣主催のレセプションでは、日本とシベリアの協働や、生物多様性保全における日本の貢献に関する讃辞が、大臣の口からさらりと出てきました。日本のさらなる活動に期待が寄せられています。
立澤 史郎(北海道大学/テーマ6実施担当者)
毎年Assembly会場となる“Harpa”(レイキャビクコンサートホール&会議場)
Japan Breakout Sessionのようす(2019年10月11日)。演壇向かって左がVinokulova教授
Sung-Ryong Kang韓国生態学研究所教授によるAMBI次期プランの紹介。今回韓国はCAFFとセッション「ARCTIC MIGRATORY BIRDS INITIATIVE: A MODEL FOR ARCTIC AND NON-ARCTIC STATE COOPERATION」を共催し多大な貢献を約束した。