ArCS 北極域研究推進プロジェクト

2018年度海洋地球研究船「みらい」北極航海 ―極夜の北極海を行く―

国際共同観測プロジェクトとのかかわり

世界気象機関(WMO)や海外研究機関でも、気象・海氷予測の精度を向上させるため、様々な取り組みが行われています。今回の「みらい」北極航海とそれらの取り組みのかかわりをご紹介します。

国際的な枠組みにおける日本独自の役割(YOPP)

極域予測年(YOPP)

今回の「みらい」北極航海は、極域予測年(YOPP、Year of Polar Prediction)の2年目の活動の一部として実施されます。YOPP期間中は、多くの国によってさまざまな観測が集中的に行われますが、太平洋側北極海およびその周辺海域を観測対象域とした観測を実施し、初冬の予測可能性研究を主導する役割は日本と「みらい」北極航海が担っています。

極域予測年(YOPP)とは

極域から中緯度における数時間から季節スケールの気象予測の精度向上を目指す世界気象機関(WMO)の10年間の国際プロジェクト(PPP:Polar Prediction Project)では、2017年半ばから2019年半ばの2年間を極域予測年と定め、気象モデルの改良を行います。国立極地研究所 南極・北極科学館の連載「南極・北極ナンバー」2018年3月号で詳しく解説されています。

今後実施予定の国際科学プロジェクトにも貢献(MOSAiC)

MOSAiC

2018年、2019年の「みらい」北極航海期間中には、ニーオルスン国際観測村(ノルウェー)にあるAWIの観測ステーションでも高層気象観測を実施します。

アルフレッドウェゲナー研究所(AWI、ドイツ)が主導して2019年から実施される北極域の国際共同観測プロジェクト(MOSAiCプロジェクト)は、ドイツ砕氷船を2019年の10月から1年間、北極海の中央域で海氷に閉じ込めて通年観測を実施し、これまで不足していた大気・海氷・海洋・生態系などの総合的なデータを大量に取得することで、数値モデルの検証・開発に役立てることを目的とするものです。

国立極地研究所を中心とする日本の研究チームもこのプロジェクトに参画し、北極海域での長期観測を行うことによって、たとえば雲物理過程・放射過程・熱輸送過程を検証し、今後の北極海航路支援モデル改良と極端気象現象の予測精度向上への応用を目指そうとしています。そのためには、日本も2019年の10月から11月の北極航海を「みらい」を用いて実現する必要がありますが、「みらい」はこれまでに初冬の北極航海を経験したことがないため、今年は来年に向けた事前調査を兼ねています。

こうした国際共同観測プロジェクトへの参画は、北極域研究観測における日本のプレゼンス向上につながります。来年、開水域(みらい航海)で得たデータと海氷上(MOSAiC)で得たデータとの比較を行うことで、気象予測や海氷予測の精緻化に対する貢献が見込まれます。