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第2章 推進・支援体制に関する評価

第2章 推進・支援体制に関する評価

1 推進体制に関する評価

(1)南極地域観測への参加及び南極地域観測統合推進本部の設置
 南極地域観測事業は、昭和30年11月4日の閣議決定(最近の改正平成12年12月26日)「南極地域観測への参加及び南極地域観測統合推進本部の設置について」に基づき実施されている。
 南極地域の厳しい自然条件下で科学的観測を実施・継続するためには、国レベルでの支援が不可欠であり、関係行政機関の連絡協議により、計画を定め、連携協力して一体的推進を図ることが重要である。統合推進本部の役割は、我が国の南極地域観測事業の安全で円滑な実施を図る上で不可欠であり、高く評価される。
 南極地域観測事業は昭和51年3月22日に統合推進本部が定めた「南極地域観測事業の将来計画基本方針」に基づき実施されてきており、次の三点を基本としている。

 1. 学術的意義の高い科学調査研究を重点的に推進すること
 2. 南極資源及びその開発に関連する基礎的な調査研究を推進すること
 3. 科学調査研究の国際協力の強化及び調査研究地域の拡大を図ること

 この昭和51年に定められた基本方針は、現在でも有意義なものと評価できる。
 統合推進本部に設けられた南極地域観測将来問題検討部会は、平成12年6月14日に報告書「21世紀に向けた活動指針」をとりまとめている。これは昭和51年に策定された「南極地域観測事業の将来計画基本方針」を踏まえた活動指針であり、南極地域観測の科学的意義を踏まえて課題がよく網羅されている。特に近年、地球環境問題についての取組みに関して国際的な協力の下での貢献が強く求められているが、本指針は、南極の特異な性格を踏まえて必要性の高い研究課題に十分対応している。
 本指針においては、それまでの活動についての評価が行われているが、統合推進本部の体制が効果的に機能してきたことは認めながらも、新規事業計画及び船舶等の支援体制について柔軟性が欠けている点、さらには資料や研究成果の一層幅広い利用の必要性等の指摘がなされている。このことに対しては今後とも更に改善に努める必要がある。
 昭和基地への輸送問題については、統合推進本部に設けられた南極輸送問題調査会議が、平成14年6月に「南極輸送問題調査報告書」を取りまとめている。この報告書は、南極地域観測将来問題検討部会の平成12年6月の報告書「21世紀に向けた活動指針」の趣旨に沿って、南極地域観測事業の将来の姿を明らかにし、これを実現するために必要な最適な輸送体制のあるべき姿及びこれを構築するための方法を示しており妥当なものと言える。南極地域観測推進の重要性に鑑み速やかな実現が期待される。
 南極地域観測は、昭和51年に統合推進本部が「南極地域観測事業の将来計画基本方針」定めて以降、5か年を1単位とする観測計画が本部総会で決定され実施されてきている。現在は第、期5か年計画(平成12年6月14日策定)の第3年次目にある。南極地域における観測は観測計画の立案から、必要な資材・観測機器の調達、担当隊員の選定、現地への輸送、現地での準備など観測開始までに長期間を必要とするため、5か年を1単位として観測計画を作成し、効率的・効果的に観測活動を実施することには合理的な理由がある。しかし、国立極地研究所が大学共同利用機関法人の中に統合されることに伴い、6か年の期間で定める中期目標及び中期計画の策定が必要となることが予想される。今後においては、これとの整合性のある観測計画の立案が望まれる。さらに、学術的動向、財政等の情勢・状況の変化に柔軟に対応できるよう、計画期間中における変更が容易となるよう中間段階での見直しができるようにしていくことが望ましい。
 なお、現在の第、期5か年計画の内容については、プロジェクト研究観測において、ドームふじ観測拠点における氷床深層掘削計画、海氷流出観測、高層大気物質観測、海洋生物調査など、国際的要求に応じて適切な観測範囲を設定している。しかし、例えば、POPS条約に基づく海洋、大気、生態系(海洋大型生物)内の微量化学物質の観測、あるいは生物多様性条約に基づく生態系調査など、今後更なる観測項目の追加、広域化などが国際的に要求されるものと思われる。

(2)実施のための組織
 南極地域観測統合推進本部には本部総会、本部連絡会、南極地域観測将来問題検討部会、南極輸送問題調査会議などが設けられている。また、統合推進本部の庶務及び観測隊の用務の遂行に伴う事務は、文部科学省研究開発局において処理することとされ、同局海洋地球課に極域科学企画官及び担当職員が置かれている。
 南極地域観測に関しては、極地に関する科学の総合的研究及び極地観測を行うことを目的とする国立極地研究所が、大学共同利用機関として昭和48年に設置され、極域科学に関する我が国の中核的機関としての役割を果たすとともに、観測隊の編成案の作成、隊員候補者の健康判定の実施、その他多くの面において、南極地域観測事業の実施を担ってきている。
 また南極地域への輸送については、自衛隊法第100条の4により、自衛隊が輸送その他の協力を行うこととされており、防衛庁海上幕僚監部防衛部運用課に南極観測支援班が置かれている。
 これらの組織は、これまで44次にわたる観測隊の派遣実績からも明らかなように、危険が伴う南極地域における科学観測を、統合推進本部の統率の下に各省庁が連携協力し安全を確保しながら推進する上で、それぞれ重要な役割を果たし、効果的に機能してきており、今後においても必要である。

(3)学術的意義の評価に関する常設委員会の設置の必要性
 現在の南極地域観測統合推進本部には、実施されている研究の学術的意義や将来実施すべき研究の優先順位について審議する組織が設けられていない。地球環境問題への対処など、南極地域観測に求められる国際的な要請が増大する中で、南極研究科学委員会(SCAR)をはじめとする国際的な学術組織からの要請に対応する上でも、また厳格な研究評価の実施が求められ事前・中間・事後の評価体制を確立する必要に対処するためにも、学術的意義の評価に関する常設委員会を統合推進本部の中に設ける方策について検討すべきである。この委員会においては、プロジェクト等の事前評価、中間評価、事後評価を実施するとともに、評価結果を観測計画に迅速に反映させる役割を担うものとすべきである。
 なお、学術的意義の評価に関する常設委員会の設置にあたっては、大学共同利用機関である国立極地研究所との連携に十分配慮する必要がある。

 
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