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はじめに

 1955年(昭和30年)の閣議決定により1956年から継続している日本の南極地域観測事業は、その意義を要約すると、次の三点があげられよう。
第一は、学術上の成果である。南極大陸は人類が長い間、その存在さえ知らなかった未知の地域であり、そこで得られる科学的知見はすべて貴重なデータだといえるが、南極地域観測の意義は、それだけにとどまらない。南極は、地球環境問題のカギを握る極めて特異な地域であり、地球の未来を考えるうえで欠かせない貴重な場所なのである。
 また、科学的な知見だけでなく、観測を支える機器や生活・輸送などの設営技術の開発など、工学の面でも産業界への波及効果は大きく、その点も広い意味での学術的な成果だといえよう。
 第二の意義は、南極条約の原署名国として日本が南極における国際協力事業に参画し、そこで重要な役割を果たしているということである。日本は、領土権の主張をいち早く放棄した国として南極条約の制定にも関わり、その後も条約協議国の主要メンバーとして南極地域で展開されているさまざまな国際的な活動の中心的な役割を担ってきたのである。
 第三の意義は、直接目には見えにくいものだが、多くの人々に「これからの地球と人類のあり方」を考える新たな視点を与える教育的な効果である。
 南極地域は、国境もなければ軍事基地もない、そして環境を守りつつ科学観測で各国が協力しあうという、いわば地球上で唯一、人類の理想を実現したところだといっていい。世界がいまだに平和な国際秩序を構築できず、血なまぐさい紛争が絶えない現在、南極という理想のモデルの存在は、それ自身ひとつの救いであり、未来への指針だといえよう。
 また、地球環境問題にせよ、国際的な枠組みづくりにせよ、これからの問題解決のためには国境を越えた対応が必要不可欠であり、それには人々の「国境にとらわれない地球的視点」が欠かせない。
 とくに「武力によらない国際秩序の構築」を目指す日本にとって、次代を担う地球的視点を持った青少年の育成は、極めて重要な課題であり、それには南極地域で展開 されているさまざまな活動が、格好の教材となろう。
 こうみてくると、第二、第三の意義は、第一の学術上の成果に優るとも劣らないものであるが、そのことを十分に踏まえたうえで、本委員会は、主として南極観測事業の科学的・学術的成果に着目し、それを中心に評価を行った。
 今回の評価は、南極地域観測事業を全体としてとらえた外部評価として初めて実施されたものであり、これをもとに適切な改善がなされ、今後の発展に資するよう希望する。

平成15年7月10日

南極地域観測事業外部評価委員会

 
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