島根日日新聞 2000年8月8日(夕刊)
「古代の環境」知らせる氷にビックリ
「南極観測の意義など紹介」第42次観測隊長が講演 平田
昭和基地での南極観測の様子や研究成果について紹介する観測隊長の講演と映画の会「白い大陸からのメッセージ」(文部省国立極地研究所主催)が8月7日、平田市平田町の市立文化館プラタナスホールで開かれた。観測隊員との電話交信や南極の氷を使った実験もあり、会場に集まった子供たちは、地球環境へ多くの示唆を与える氷の大陸へ思いを馳せた。
日本における南極観測は、1956年に第1次観測隊が出発、翌57年には昭和基地が建設され、有害紫外線を吸収するオゾン層の一部がフロンガスによって破壊されているオゾンホールの発見など、地球環境を考察する上で大きな成果をあげてきた。
同会では、今年11月に南極へ出発する第42次観測隊長の本吉洋一・国立極地研究所助教授が、「南極の自然と観測隊」と題して講演。南極観測隊の生活の様子やオーロラやペンギンなど南極の自然を映したスライドを交えながら、研究内容の目的や意義について紹介した。
この中で、南極の氷と冷凍庫でつくった氷が別々に入った二つのコップに水を入れ、氷の違いをみる比較実験も。水を注ぐと音を出しながら泡を出す南極の氷は、数十万年前に降り積もった雪が固まってできたもので、この泡はこの間氷の中に閉ざされていた地球上の空気であることが説明された。また、古代からの環境情報を蓄積している南極の氷を調べることによって、気温や二酸化炭素濃度の推移などを連続的に観測できることが紹介された。
昭和基地にいる観測隊員との電話交信では、4人の小・中学生が受話器を握り、基地に滞在する期間や基地の場所を選んだ理由などについて質問。また、灘分小学校5年生の槙野皓太君が本吉さんに宛てた手紙が読み上げられ、「南極のペンギンを地球の温暖化から守っていきたい。将来は南極に行きたい」と書いた槙野君に対し、本吉さんから、「南極では学者をはじめ医者やエンジニアなど様々な人が活躍している。身体を鍛えて、あきらめずに頑張って」とエールを送られる一幕もあった。 会場には平田市内の小・中学生をはじめ、保護者や教職員ら約830人が訪れ、熱心に耳を傾けた。
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