2016年2月のプレスリリース「船舶を利用した北極海上でのブラックカーボン粒子の高精度測定に世界で初めて成功―北極域から全球へ、気候変動予測の精緻化に貢献―」に関して、論文の著者である竹谷主席研究員(海洋研究開発機構)に質問しました。プレスリリースとあわせてお読みください。
プレスリリースの要点
- 船舶を用いた世界初の北極域での洋上定点観測を実施することにより、0.01ng/㎥(1立方メートルあたり0.01ナノグラム)という非常に低い濃度での高精度測定に成功し、北極域におけるBCの太陽光吸収や大気からの除去過程に関する重要な知見を得た。
質問
① みらい上で洋上定点観測を実施するまでに、どんな苦労がありましたか?
船上観測では、大気取り込み口が着氷などにより、ふさがりそうになってしまいました。また、夏季の北極域でのBCの濃度は低い可能性が指摘されており、その低濃度の測定のため、ラボ実験などで使用されている高精度測定用装置を利用しました。その結果、高精度で測定できる一方、データ量が膨大となり、その解析にも苦労しました。
② 海外も含めて、プレスリリースの反響はいかがでしたか?
国内の新聞社の取材や大気観測を行っている国内の関係者や国外からも論文について問い合わせがありました。また、アメリカ地球物理学連合(AGU)の会報誌「EOS」にも掲載・紹介されました。
③ ご自身の研究について、特にどのような人に興味をもってもらいたいですか?
北極の大気モニタリングを実施している研究者や、モデル研究を行っている方に興味を持っていただきたいと思います。
④ 今後はどのような研究をするのですか?
今後は、北極海上でのBCの観測を継続するとともに、BCの北極海上への輸送に関するデータを取得するため、アラスカでのBC観測を実施して行きたいと考えています。
竹谷主席研究員は、「北極気候に関わる大気物質」メニュー(小池PI)の実施担当者です。次の研究成果をどうぞお楽しみに。