ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

ベーリング海北部セントローレンス島での海鳥調査2017

テーマ6の生物多様性課題では、昨年に引き続きベーリング海北部セントローレンス島で海鳥の生態に関する調査を実施しています。今年は7月中旬〜8月下旬まで極地研、北海道大学水産科学院、アラスカ大学フェアバンクス校から5名の研究者が入れ替わりながら現地エスキモーのガイド2名とともに調査を進めています。私自身は7月12日から28日まで現地入りして野外調査を行ってきました。

アラスカのノームから9人乗りの小さな飛行機でセントローレンス島の村サヴォンガに到着し、すぐ翌日から毎日各種海鳥の繁殖地を回りました。冬の間の渡りルートを調べるために、昨シーズンにジオロケータ(照度から鳥の位置を記録する装置)を取り付けた個体を探すためです。海鳥はほとんどの個体が毎年同じ巣に戻って来て繁殖を行う習性があるので、1年前に捕まえた同じ個体をもう一度捕まえるという離れ技が可能です。とはいえ、プラスチック製の足環が割れてジオロケータが脱落していないか、渡りの間にどこかで死んでしまっていないかなど、心配は尽きません。そのため、巣に足環のついた個体がいることを確認し、捕まえてジオロケータを回収できたときは本当にホッとします。夏の長い日長時間を利用して調査は時には夜11時近くまで続きます。一日の調査を終えて調査のベースに戻ると、ジオロケータを回収できた日にはビールで乾杯!といきたいところですが、サヴォンガは村のエスキモーの人たちの取り決めで一切禁酒。慎ましくお茶での祝杯となりました。

ジオロケータの回収の他にも、GPS記録計の取り付けや様々な生理分析・汚染分析のための血液や羽根などのサンプルの採取といった調査を進めました。私が島を一足先に島を離れる際、調査を手伝ってくれたエスキモーのガイドの一人が「海鳥たちが冬にどこに行っているかジオロケータの結果が出たら教えてくれ」といってメールアドレスを書いたメモを渡してくれました。彼らの期待に応えるためにもデータ解析を急いで進めなければと思っています。

高橋晃周・国立極地研究所(テーマ6実施担当者)


崖の上から竿を延ばしてウミガラスの捕獲を試みる


捕獲後にミツユビカモメを測定中。現地エスキモーのガイドには調査を終始手伝ってもらった。


ミツユビカモメに一年前に取り付けたジオロケータの回収に成功。

ベーリング海北部セントローレンス島での海鳥調査(2016年度)
ベーリング海北部セントローレンス島での海鳥調査(2018年度)
ベーリング海北部セントローレンス島での海鳥調査(2019年度)