ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

平成30年度若手研究者海外派遣報告:イタリアでの北極研究セミナーとサハ共和国での研究活動

2019年3月14日から4月13日までArCS若手研究者派遣支援プロジェクトの支援を受け、イタリアとロシアを訪問しました。私が本プロジェクトで支援していただいたのは2回目です。1回目は2017年にロシア連邦・サハ共和国を訪問し、ホッキョクグマ研究プロジェクトを立ち上げました。今回の派遣では、ロシアでのホッキョクグマ研究のさらなる発展に向けて、情報発信と研究打ち合わせを主な柱として活動しました。

まずは、北極研究セミナー「Gordon Research Seminar」に参加するため、イタリア・ルッカを訪れました。このセミナーは年数回、世界各国で開催されており、北極研究の現状についてざっくばらんに意見交流することを目標としています。今回のセミナーには、アメリカ、スコットランド、カナダ等々から30~40名の研究者が集まりました。博士課程の学生の姿も多く、最新の研究状況を踏まえた“これからの北極研究”にむけて、活発に議論されていたのが印象的でした。私もロシア・サハ共和国で取り組んでいるホッキョクグマ研究について発表し、様々な国の研究者から意見を頂戴しました。これまで意識していなかった視点からの問題提起も受けたので、今後の研究計画に取り入れていきたいです。

セミナーのあとは、ロシア連邦サハ共和国に移動し、共同研究機関であるIBPC(ロシア科学アカデミーシベリア支部凍土圏生物問題研究所)を訪問しました。2017年から開始したホッキョクグマ研究試料の収集について、各地での進捗状況を確認しました。そして現在の進捗を踏まえたうえで、今年と来年の具体的な研究計画について話合いました。本派遣期間中に、試料採取のための野外調査を計画していましたが、諸事情により参加不可能となったのは非常に残念でしたが、このことも今後の計画を練るうえでの貴重な経験になりました。なかなか一筋縄ではいかない研究地域ではありますが、今回の派遣を通して日露双方の協力体制をより強固なものにし、研究発展に向けて強く意思統一できたのではないかと思います。

神保 美渚(北海道大学)


北極研究セミナーが開催されたイタリア・ルッカ州・バルガの景色


ヤクーツクの共同研究者と。左から、キリリン氏、私、オクロプコフ氏