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資料10
南 極 条 約
 
昭和34(1959)年12月1日 ワシントンで署名
昭和35(1960)年7月15日 国会承認
昭和35(1960)年8月4日 批准書寄託
昭和36(1961)年6月23日 発効
昭和36(1961)年6月24日 公布(条約第五号)

 アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、チリ、フランス共和国、日本国、ニュー・ジーランド、ノールウェー、南アフリカ連邦、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国の政府は、南極地域がもっぱら平和的目的のために恒久的に利用され、かつ、国際的不和の舞台又は対象とならないことが、全人類の利益であることを認め、南極地域における科学的調査についての国際協力が、科学的知識に対してもたらした実質的な貢献を確認し、国際地球観測年の間に実現された南極地域における科学的調査の自由を基礎とする協力を継続し、かつ、発展させるための確固たる基礎を確立することが、科学上の利益及び全人類の進歩に沿うものであることを確信し、また、南極地域を平和的目的にのみ利用すること及び南極地域における国際間の調和を継続することを確保する条約が、国際連合憲章に掲げられた目的及び原則を助長するものであることを確信して、次のとおり協定した。

第一条【軍事利用の禁止】

1 南極地域は、平和的目的のみに利用する。軍事基地及び防衛施設の設置、軍事演習の実施並びにあらゆる型の兵器の実験のような軍事的性質の措置は、特に、禁止する。
2 この条約は、科学的研究のため又はその他の平和的目的のために、軍の要員又は備品を使用することを妨げるものではない。

第二条【科学的調査の自由と協力】

 国際地球観測年の間に実現された南極地域における科学的調査の自由及びそのための協力は、この条約の規定に従うことを条件として、継続するものとする。

第三条【科学的調査についての国際協力】

1 締約国は、第二条に定めるところにより南極地域における科学的調査についての国際協力を促進するため、実行可能な最大限度において、次のことに同意する。
(a)南極地域における科学的計画の最も経済的なかつ能率的な実施を可能にするため、その計画に関する情報を交換すること。
(b)南極地域において探険隊及び基地の間で科学要員を交換すること。
(c)南極地域から得られた科学的観測及びその結果を交換し、及び自由に利用することができるようにすること。
2 この条の規定を実施するに当たり、南極地域に科学的又は技術的な関心を有する国際連合の専門機関及びその他の国際機関との協力的活動の関係を設定することを、あらゆる方法で奨励する。

第四条【領土主権・請求権の凍結】

1 この条約のいかなる規定も、次のことを意味するものと解してはならない。
(a)いずれかの締約国が、かつて主張したことがある南極地域における領土主権又は領土についての請求権を放棄すること。
(b)いずれかの締約国が、南極地域におけるその活動若しくはその国民の活動の結果又はその他の理由により有する南極地域における領土の請求権の基礎の全部又は一部を放棄すること。
(c)他の国の南極地域における領土主権、領土についての請求権又はその請求権の基礎を承認し、又は否認することについてのいずれかの締約国の地位を害すること。
2 この条約の有効期間中に行なわれた行為又は活動は、南極地域における領土についての請求権を主張し、支持し、若しくは否認するための基礎をなし、又は南極地域における主権を主張するものではない。南極地域における領土についての新たな請求権又は既存の請求権の拡大は、この条約の有効期間中は、主張してはならない。

第五条【核爆発・放射性廃棄物の処分の禁止】

1 南極地域におけるすべての核の爆発及び放射性廃棄物の同地域における処分は、禁止する。
2 核の爆発及び放射性廃棄物の処分を含む核エネルギーの利用に関する国際協定が、第九条に定める会合に代表者を出席させる権利を有するすべての締約国を当事国として締結される場合には、その協定に基づいて定められる規則は、南極地域に適用する。

第六条【適用地域】

 この条約の規定は、南緯六十度以南の地域(すべての氷だなを含む。)に適用する。ただし、この条約のいかなる規定も、同地域内の公海に対する国際法に基づくいずれの国の権利又は権利の行使をも害するものではなく、また、これらにいかなる影響を及ぼすものではない。

第七条【監視員と査察】

1 この条約の目的を促進し、かつ、その規定の遵守を確保するため、第九条にいう会合に代表者を参加させる権利を有する各締約国は、この条に定める査察を行なう監視員を指名する権利を有する。監視員は、その者を指名する締約国の国民でなければならない。監視員の氏名は、監視員を指名する権利を有する他のすべての締約国に通報し、また、監視員の任務の終了についても、同様の通告を行なう。
2 1の規定に従って指名された各監視員は、南極地域のいずれかの又はすべての地域にいつでも出入する完全な自由を有する。
3 南極地域にすべての地域(これらの地域におけるすべての基地、施設及び備品並びに南極地域における貨物又は人員の積卸し又は積込みの地点にあるすべての船舶及び航空機を含む。)は、いつでも、1の規定に従って指名される監視員による査察のため開放される。
4 監視員を指名する権利を有するいずれの締約国も、南極地域のいずれかの又はすべての地域の空中監視をいつでも行うことができる。
5 各締約国は、この条約がその国について効力を生じた時に、他の締約国に対し、次のことについて通報し、その後は、事前に通告を行なう。
(a)自国の船舶又は国民が参加する南極地域向けの又は同地域にあるすべての探険隊及び自国の領域内で組織され、又は同地域から出発するすべての探険隊
(b)自国の国民が占拠する南極地域におけるすべての基地
(c)第一条に定める条件に従って南極地域に送り込むための軍の要員又は備品

第八条【裁判権】

1 この条約に基づく自己の任務の遂行を容易にするために、第七条1の規定に基づいて指名された監視員及び第三条1(b)の規定に基づいて交換された科学要員並びにこれらの者に随伴する職員は、南極地域におけるその他のすいべての者に対する裁判権についての締約国のそれぞれの地位を害することなく、南極地域にある間に自己の任務を遂行する目的をもつて行なつたすべての作為又は不作為については、自己が国民として所属する締約国の裁判権にのみ服する。
2 1の規定を害することなく、南極地域における裁判権の行使についての紛争に関係する締約国は、第九条1(e)の規定に従う措置が採択されるまでの間、相互に受諾することができる解決に到達するため、すみやかに協議する。

第九条【締約国の会合】

1 この条約の前文に列記する締約国の代表者は、情報を交換し、南極地域に関する共通の利害関係のある事項について協議し、並びに次のことに関する措置を含むこの条約の原則及び目的を助長する措置を立案し、審議し、及びそれぞれの政府に勧告するため、この条約の効力発生の日の後二箇月以内にキャンベラで、その後は、適当な間隔を置き、かつ、適当な場所で、会合する。
(a)南極地域を平和的目的にのみ利用すること。
(b)南極地域における科学的研究を容易にすること。
(c)南極地域における国際的な科学的協力を容易にすること。
(d)第七条に定める査察を行なう権利の行使を容易にすること。
(e)南極地域における生物資源を保護し、及び保存すること。
2 第十三条の規定に基づき加入によりこの条約の当事国となつた各締約国は、科学的基地の設置又は科学的探険隊の派遣のような南極地域における実質的な科学的研究活動の実施により、南極地域に対する自国の関心を示している間は、1にいう会合に参加する代表者を任命する権利を有する。
3 第七条にいう監視員からの報告は、1にいう会合に参加する代表者に送付する。
4 1にいう措置は、その措置を審議するために開催された会合に代表者を参加させる権利を有したすべての締約国により承認された時に効力を生ずる。
5 この条約において設定されたいずれかの又はすべての権利は、この条に定めるところによりその権利の行使を容易にする措置が提案され、審議され、又は承認されたかどうかを問わず、この条約の効力発生の日から行使することができる。

第十条【原則・目的の確保】

各締約国は、いかなる者も南極地域においてこの条約の原則又は目的に反する活動を行なわないようにするため、国際連合憲章に従った適当な努力をすることを約束する。

第十一条【紛争の解決】

1 この条約の解釈又は適用に関して二以上の締約国間に紛争が生じたときは、それらの締約国は、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決又はそれらの締約国が選択するその他の平和的手段により紛争を解決するため、それらの締約国間で協議する。
2 前記の方法により解決されたこの種の紛争は、それぞれの場合にすべての紛争当事国の同意を得て、解決のために国際司法裁判所に付託する。もつとも、紛争当事国は、国際司法裁判所に付託することについて合意に達することができなかつたときにも、1に掲げる各種の平和的手段のいずれかにより紛争を解決するため、引き続き努力する責任を免れない。

第十二条【修正・改正・再検討・脱退】

1(a)この条約は、第九条に定める会合に代表者を参加させる権利を有する締約国の一致した合意により、いつでも修正し、又は改正することができる。
 その修正又は改正は、これを批准した旨の通告を寄託政府が前記のすべての締約国から受領した時に、効力を有する。
(b)その後、この条約の修正又は改正は、他の締約国については、これを批准した旨の通告を寄託政府が受領した時に、効力を生ずる。他の締約国のうち、(a)の規定に従って修正又は改正が効力を生じた日から二年の期間内に批准の通告が受領されなかつたものは、その期間の満了の日に、この条約から脱退したものとみなされる。
2(a)この条約の効力発生の日から三十年を経過した後、第九条に定める会合に代表者を参加させる権利を有するいずれかの締約国が寄託政府あての通報により要請するときは、この条約の運用について検討するため、できる限りすみやかにすべての締約国の会議を開催する。
(b)前記の会議において、その会議に出席する締約国の過半数(ただし第九条に定める会合に代表者を参加させる権利を有する締約国の過半数を含むものとする。)により承認されたこの条約の修正又は改正は、その会議の終了後直ちに寄託政府によりすべての締約国に通報され、かつ、1の規定に従って効力を生ずる。
(c)前記の修正又は改正がすべての締約国に通報された日の後二年の期間内に1(a)の規定に従って効力を生じなかつたときは、いずれの締約国も、その期間の満了の後はいつでも、この条約から脱退する旨を寄託政府に通告することができる。その脱退は、寄託政府が通告を受領した後二年で効力を生ずる。

第十三条【批准・加入・効力発生・登録】

1 この条約は、署名国によって批准されるものとする。この条約は、国際連合加盟国又は第九条に定める会合に代表者を参加させる権利を有する締約国の同意を得てこの条約に加入するように招請されるその他の国による加入のために開放される。
2 この条約の批准又はこれへの加入は、それぞれの国がその憲法上の手続に従って行なう。
3 批准書及び加入書は、寄託政府として指定されたアメリカ合衆国政府に寄託する。
4 寄託政府は、すべての署名国及び加入国に対し、批准書又は加入書の寄託の日並びにこの条約及びその修正又は改正の効力の発生の日を通報する。
5 この条約は、すべての署名国が批准書を寄託した時に、それらの国及び加入書を寄託している国について、効力を生ずる。その後は、この条約は、いずれの加入国についても、その加入書の寄託の時に効力を生ずる。
6 この条約は、寄託政府が国際連合憲章第百二条に従って登録する。

第十四条【正文】

 この条約は、ひとしく正文である英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語により作成し、アメリカ合衆国政府の記録に寄託する、同政府は、その認証謄本を署名国政府及び加入国政府に送付する。

 
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