ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

注目され始めた北極科学協力協定〜日本のロシア海域科学調査への示唆〜

ArCSの「北極関連会合専門家派遣」と「国際共同研究推進:テーマ7」の成果として、2017年5月北極評議会(Arctic Council:AC)の下で交渉され成立した国際条約、北極科学協力協定の意義を分かりやすく解説する記事が公表されました。北極8ヶ国、すなわちカナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、米国の外務大臣が署名して成立した「北極に関する国際科学協力の促進に関する協定」(北極科学協力協定)は、地理的には北極域全体を一体としてカバーし、機能的には北極に関するすべての科学活動を対象にして、国際的な科学協力を促進するための新条約です。ACをフォーラムとして交渉され妥結した条約はこれで3つ目となります。ACの条約形成フォーラムとしての活用が今後も注目されます。

協定は、北極にまつわる科学的知識の発展を向上させるため、科学活動における国際協力を促進することを目的として、研究者とその調査機器・サンプルなどの出入国を容易にし、関連研究施設、調査船などの研究プラットフォーム、そして砕氷船などの後方支援サービスへのアクセスを容易にし、海域を含む「指定された地理的区域(Identified Geographic Areas:IGA)」での調査のためのアクセスを容易にする義務を協定締約国に課しています。

この協定は海域を含む調査区域へのアクセスを容易にするなど北極科学活動をよりしやすくするものです。日本のような非北極国とその科学者にも、間接的ながら、協定の便益が広がるような工夫がされており、特にベーリング海周辺のロシアEEZが広く協定の対象になったことにより、この海域での科学的調査に関心をもつ日本および日本の科学者にとってもメリットがありえるものです。

笹川平和財団海洋政策研究所のOcean Newsletter第421号において、この協定の意義を分かりやすく解説しました。ぜひご覧ください。 

https://www.spf.org/opri-j/projects/information/newsletter/backnumber/2018/421_3.html

柴田明穂(神戸大学/テーマ7実施担当者)