ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

グリーンランド北西部イングレフィールドフィヨルドでの海洋調査とケケッタ村でのワークショップ

カナック氷河での観測と、ボードインフィヨルドでの海洋調査を終えたあと、私たちはイングレフィールドフィヨルドで調査をするため、8月12日にケケッタ村を訪れました。ケケッタ村は、イングレフィールドフィヨルドの奥に位置する小さな村です。イングレフィールドフィヨルドには、Tracy氷河やHeilprin氷河に代表される、流れの速い氷河が流入しています。

氷河・氷床と海洋の相互作用が、周辺の海洋環境、また人間活動に与える影響を明らかにするため、私たちはイングレフィールドフィヨルドで次の4つの観測を行いました。1.海水のサンプリング、動・植物プランクトンのサンプリング、CTD(水温・塩分・深度)キャスト。2.海底堆積物のサンプリング。3.音響測深。4.アザラシやイッカクなどの目視調査、および音響調査。観測中は、様々なサイズの氷山が、フィヨルド内で数多くみられ、観測・航行の妨げになりました。現地協力者の大島トク氏によると、今夏のグリーンランドは非常に温暖であるため、例年になく氷山が多い(氷山が分離しやすい)状況にあります。また観測中にアザラシに出会う機会があり、現地の猟師によるアザラシ猟を見ることができました。
8月18日に、ケケッタ村で暮らす人々を集めてワークショップを開催しました。ワークショップの前半では、周辺で行っている私たちの観測活動を村の人々に紹介し、また聴衆から寄せられる質問に、科学的見地から答えることを試みました。聴衆からは、狩猟と関係する海洋環境についての質問、とりわけ海洋汚染物質がどの程度アザラシやイッカクに生物濃縮されているかを懸念する声が挙がりました。ワークショップの後半では、前述の大島トク氏が、昨年日本を訪問した際に行った講演の様子について話してくださいました。ワークショップ後には、ケケッタ村周辺の海底地形図の配布や、アザラシやイッカクの生息地を問うアンケート調査も行いました。村の人々が熱心に耳を傾ける様子や、彼らとの対話を通して、私たちの研究がいかに重要であるか、またこの地で研究を継続することの大切さに気付くことができました。

王 鄴凡(北海道大学)


イングレフィールドでの化学分析用海水のサンプリング


ケケッタで行われたワークショップの様子。通訳を交えての研究紹介


観測中に捕獲したアザラシの身体測定の様子

観測メンバー:王 鄴凡、漢那 直也、安藤 卓人、浅地 泉、櫻木 雄太

その他のカナック調査観測についての記事はこちらから

<2016年>
グリーンランド北西部カナックでの観測(カナックから①)
グリーンランド・ボードイン氷河での野外観測(カナックから②)
グリーンランド北西部フィヨルドでの海洋観測(カナックから③)
カナックの村人とのワークショップ(カナックから④)

<2017年>
グリーンランド北西部、氷床上の観測1 —自動気象測器のメンテナンスー
グリーンランド北西部、氷床上の観測2 —ボードイン氷河における観測—
カナックの住民とのワークショップ
グリーンランド北西部フィヨルドでの海洋調査

<2018年>
グリーンランド北西部カナック氷帽と流出河川での調査
カナック村住民とのワークショップ
Inglefieldフィヨルドでの海洋観測とケケッタ村住民とのワークショップ

<2019年>
グリーンランド北西部Bowdoin氷河観測
グリーンランド北西部におけるカナック氷帽の質量収支と融解水流出の観測