ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

グリーンランド北西部Bowdoin氷河観測

ArCSテーマ2「グリーンランドにおける氷床・氷河・海洋・環境変動」では、氷河氷床の変動と海洋との相互作用に着目し、グリーンランド北西部カナック村周辺にて2016年より毎年夏季に現地観測を実施しています。今年2019年7月1~15日には、カナック村から約30 km北東に位置し、海洋に流入しているBowdoin氷河にて観測を行いました。グリーンランド北西部はアクセスが難しく、現地観測データが乏しい状況にあります。さらにBowdoin氷河のような海洋に流入する氷河では、氷山やクレバスが多く観測が容易ではありません。このような背景から、私たちは氷河で継続的に観測を行うことで、近年の氷河変動やそのメカニズムを明らかにすることを目的としています。

本観測は、スイス連邦工科大学の研究者4名と共同で行いました。スイスのグループは、ドローンを用いた氷河表面標高の測定や、GPSによる氷河末端部のクレバス観測等、最新の機器を使った観測を得意としています。一方我々のグループは、アイスレーダを用いた氷厚の測定や、氷河流動の連続測定により、氷河変動に関わる詳細な観測を行いました。それぞれの技術を生かし多面的な観測を行うことで、海洋に流入する氷河の変動とそのメカニズムをより明らかにすることができると考えています。Bowdoin氷河における2週間の活動はあっという間でしたが、今後のデータ解析が楽しみです。

浅地 泉(北海道大学)


ヘリコプターから撮影したBowdoin氷河の末端の様子です。


スイスのグループはドローンを用いた空撮によって、氷河の表面標高を測定します。


氷河を横断しながら、アイスレーダを用いて、氷厚を測定します。

観測メンバー:杉山 慎、エヴゲニ・ポドルスキー、浅地 泉、近藤 研

その他のカナック調査観測についての記事はこちらから

<2016年>
グリーンランド北西部カナックでの観測(カナックから①)
グリーンランド・ボードイン氷河での野外観測(カナックから②)
グリーンランド北西部フィヨルドでの海洋観測(カナックから③)
カナックの村人とのワークショップ(カナックから④)

<2017年>
グリーンランド北西部、氷床上の観測1 —自動気象測器のメンテナンスー
グリーンランド北西部、氷床上の観測2 —ボードイン氷河における観測—
カナックの住民とのワークショップ
グリーンランド北西部フィヨルドでの海洋調査

<2018年>
グリーンランド北西部カナック氷帽と流出河川での調査
カナック村住民とのワークショップ
Inglefieldフィヨルドでの海洋観測とケケッタ村住民とのワークショップ

<2019年>
グリーンランド北西部におけるカナック氷帽の質量収支と融解水流出の観測
グリーンランド北西部イングレフィールドフィヨルドでの海洋調査とケケッタ村でのワークショップ