サルイット・リサーチ・ステーションから北東の海岸のほうに延びる道を歩きつつ、向かい風(北東風)のそよ風を受けてリフレッシュできました。石ころがちな道にかぶさるようにちょっとした斜面があり、その下半分ほどは草が繁茂する草原でした。
ごつごつして冷たいツンドラの地の上を、鳥たちがさえずりながら飛んでいきました。石ころがちな道が上り坂になってジグザグしだした時、向こうの丘の上に、立派な角を生やしたカリブーが、闖入者たる私たちを見張っているのでしょうか、歩みを止めてこちらを見ていました。(他のシカ類はオスにしか角が生えないのと違って)カリブーは雌雄とも角が生えるので、これがオスかメスかは分かりませんでした。
丘の頂上付近の緩やかな斜面は露岩域で、さらに岩の上に上って、辺りを見回しました。見ためでいちばん多かったのは、岩の表面に生えている、緑色がかった同心円状の痂状地衣類(固着地衣類)で、その外見的特徴からおそらくXanthoparmelia属のものと思われました。よく見ると、同心円の内側ほど古く、外側ほど若く、中間部はその中間的な年齢のように思えました。そこで、内・中・外の同心円を別々にサンプリングしました。これで「ひとつの地衣類コロニーの中で年齢が異なる部分の微生物相の比較」ができることになります。私はがんばってサンプリングしました。
帰路に、付近の頂上部にある氷塊(残雪)を見ました。夏の太陽に照らされて融けた水が流れ出ていて、周囲の草原を涵養していました。
メリー・サイロンガ・ファルアブル
(和訳:長沼 毅/広島大学(テーマ6研究協力者))
事務局注:メリー・サイロンガ・ファルアブルさんはArCSの参加研究者ではありませんが、
ArCSテーマ6の研究に必要な調査をしていただきましたので、調査の様子をご紹介いたします。