若手派遣報告 | ArCS II 北極域研究加速プロジェクト https://www.nipr.ac.jp/arcs2 北極域に関する先進的・学際的研究を推進し、その社会実装を目指します Mon, 06 Jan 2025 06:02:18 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.5 「ArCS II 若手人材海外派遣プログラム2024年度参加報告会」開催報告 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2025-01-06-1/ Mon, 06 Jan 2025 06:02:17 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13599 2024年12月19日(木)、TKP東京駅カンファレンスセンター(東京都中央区)においてArCS II若手人材海外派遣プログラム2024年度参加報告会を開催しました。今年度も現地とオンラインのハイブリッド形式での開催とな […]

The post 「ArCS II 若手人材海外派遣プログラム2024年度参加報告会」開催報告 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

2024年12月19日(木)、TKP東京駅カンファレンスセンター(東京都中央区)においてArCS II若手人材海外派遣プログラム2024年度参加報告会を開催しました。今年度も現地とオンラインのハイブリッド形式での開催となり、派遣プログラムの参加者10名(現地出席8名・オンライン出席2名)による研究成果の発表および、現地参加者と本プログラム関係者による座談会が行われました。

発表では今回の派遣目的、研究内容、派遣先での取り組み状況や研究成果についての報告がされました。各々工夫を凝らして作成したスライドをスクリーンに映しながら、参加した学会での発表風景、現地での調査・観測の様子や得られた成果、大変だったことや予期せぬトラブルについて等、さまざまな報告がされました。熱意を持って取り組んだことが伝わる興味深い発表となり、発表を聞いていた関係者や他の参加者からの質疑応答も盛んに行われました。また、派遣先での滞在中の過ごし方や、地域の方々・他の研究者との関わりについても語られ、海外での新鮮な体験の様子を臨場感と共に感じることができました。

その後の座談会でも和やかな雰囲気の中で活発な意見交換がなされ、大変実りある報告会となりました。

発表の様子
座談会の様子

参加者からは、他の参加者と交流できて非常に充実した時間を過ごせた、他の派遣者との交流や報告を聞くことができ大変勉強になった、といった感想が寄せられ、今後の人脈構築を含め人材育成としての重要な役割を担っている事業であると感じました。

 

関連リンク

The post 「ArCS II 若手人材海外派遣プログラム2024年度参加報告会」開催報告 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
アラスカ内陸部永久凍土上疎林における細根深度分布調査の実施 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-22-2/ Tue, 26 Nov 2024 04:33:53 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13383 若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣 甘田 岳(森林研究・整備機構) 若手人材海外派遣プログラム短期派遣支援により、2024年8月26日~9月25日にかけてアメリカ合衆国のアラスカ大学フェアバンクス校に […]

The post アラスカ内陸部永久凍土上疎林における細根深度分布調査の実施 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
甘田 岳(森林研究・整備機構)

若手人材海外派遣プログラム短期派遣支援により、2024年8月26日~9月25日にかけてアメリカ合衆国のアラスカ大学フェアバンクス校に滞在しました。

今回の滞在では、永久凍土融解に対する植物の応答メカニズムを明らかにすることを目指し、細根(直径2 mm以下の細い根)の深度分布の評価を行いました。温暖化が急速に進む周北極域では、永久凍土の融解が進行しています。この時、永久凍土融解に最も敏感に反応するのは、凍土面近くまで根を深く張っている植物種であることが近年の研究から指摘されています。しかし、細根の種識別は非常に難しいことから、永久凍土植生の細根深度分布を種レベルできちんと評価した研究はほとんどありませんでした。そこで本プログラムでは、アラスカ内陸部において永久凍土上の典型的な植生であるクロトウヒ疎林(写真1)を対象に、細根の深度分布調査を実施しました。

(写真1)典型的な永久凍土上のクロトウヒ林

研究サイトはアラスカ大学フェアバンクス校が管理するポーカーフラットリサーチレンジ観測サイトにおいて行いました。ここはアラスカ大学や日本の海洋研究開発機構の研究者らが気象や永久凍土の観測を行っているサイトです。この観測サイトの主要な植生であるクロトウヒの疎林において10か所の小サイトを設営し、永久凍土面付近まで深さ10㎝毎に土壌コアを採集しました。採集した土壌コアは実験室に持ち帰り、①細根種識別用、②細根量測定用、③土壌栄養分析用の3つに分けました。①と②では、ピンセットを用いて土壌から細根を丁寧に全て取り出しました。大体1サンプルに2~3時間もかかるほど大変手間のかかる作業となりました。その後、①の細根はアラスカ大の遺伝子分析に詳しいDiana Wolf氏とNaoki Takebayashi氏に引き渡し分析を依頼し、②の細根は乾燥させ保存しました。③に関しては、正規の手続きを踏んで日本へ輸入し、現在栄養分析を進めています。

(写真2)土壌採集風景

今回実施した調査は大変手間と時間がかかり、少なくとも1か月は現地滞在が必要となるものでした。今回、ArCS IIの海外派遣プログラムに採択していただけたことで、資金面に不安を覚えることなく、腰を据えて調査に専念することができました。心より感謝申し上げます。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post アラスカ内陸部永久凍土上疎林における細根深度分布調査の実施 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
スウェーデンでの研究交流 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-22-1/ Tue, 26 Nov 2024 04:33:36 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13381 若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣 本間 朝香(名古屋大学) 北極域研究加速プロジェクト (ArCS II) の若手人材海外派遣プログラムの一環として、2024年8月25日から9月19日にかけてスウェ […]

The post スウェーデンでの研究交流 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
本間 朝香(名古屋大学)

北極域研究加速プロジェクト (ArCS II) の若手人材海外派遣プログラムの一環として、2024年8月25日から9月19日にかけてスウェーデン気象・水文研究所(SMHI)に滞在して研究交流を行いました。

(写真1)SMHIのエントランス

滞在中は主にHYPEという水文モデルの勉強を行いました。HYPEは、河川流域をさらに細かい流域に分割し、その各流域において土地利用や土壌種類によって異なる計算内容でシミュレーションを行うため、非常に観測値と整合性の高い流量等のシミュレーションをすることができます。私はロシアにあるレナ川の河川水がどのように形成されているのかを研究しているため、流域中でどの地域の流量が大きいのかをシミュレーション可能なHYPEは非常に役立つものでした。また、モデルを勉強していく中で、土壌中ではどのような流出機構があるのか、モデルではどのような点で実際との不確実性を大きく持つのか、など水文学的な知見も得ることができました。現在も、HYPEによって自分の研究をさらに向上させることができるように試行錯誤を続けています。また、研究所に滞在している間のセミナーでは、研究紹介をする機会を設けていただきました。初めての英語での質疑応答等は緊張しましたが、多くの研究者の方から様々なフィードバックをいただき、今後の研究を進める上で非常に参考になりました。

加えて、スウェーデンとフィンランドの国境にあるトルネ川という河川のフィールド調査にも同行しました。このフィールド調査では河川流量を観測することが目的であり、実際の測定方法を体験することで研究の手法の深い理解に繋がりました。また、トルネ川は私の研究対象地域であるレナ川よりは小さい河川ですが、日本にはないような大河川でした。そのため、現状はレナ川を訪れることはできないのですが、今回のフィールド調査でレナ川がどのような河川なのかイメージすることができました。

(写真2)フィールド調査地のトルネ川の様子

滞在を通して、海外の研究機関に滞在して日常的に受入研究者と議論したことや、大自然の中で泥だらけになりながらフィールド調査を行ったことは自身の研究の向上にも貢献しましたし、海外で研究を行うという意味でも非常に良い経験となりました。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post スウェーデンでの研究交流 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
北極域土壌を用いた生分解性プラスチックの分解率調査 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-21-1/ Tue, 26 Nov 2024 04:33:27 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13374 若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣 谷口 南帆(県立広島大学) 今回、私はノルウェー・スバールバル諸島ニーオルスンで生分解性プラスチックの埋設、回収および土壌サンプリングを行いました。 プラスチックは […]

The post 北極域土壌を用いた生分解性プラスチックの分解率調査 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
谷口 南帆(県立広島大学)

今回、私はノルウェー・スバールバル諸島ニーオルスンで生分解性プラスチックの埋設、回収および土壌サンプリングを行いました。

プラスチックは人間の生活を支える便利なものですが、ごみによる環境問題を引き起こしています。この問題を解決する方法のひとつとして生分解性プラスチックが社会的に注目を浴び、既に商品として生み出されています。それらは人の手や、海を漂うことで世界中に拡散されます。北極域も例外ではありません。そこで本研究では、生分解性プラスチックが北極域ではどのように分解されるのかを明らかにすることを目的とし、2種類の実験を行います。ひとつは実際に現地に生分解性プラスチックを埋設し、その重量の変化から分解率を測定する方法です。もうひとつは、生分解性プラスチックが最終的に水と二酸化炭素に分解されることから、その二酸化炭素を測定して分解率を求める方法です。

(写真1)発掘した生分解性プラスチック
(写真2)生分解性プラスチックサンプルを埋設する様子

現地では、2年前に同研究室の先輩が埋設した生分解性プラスチックサンプルの回収(写真1)、新しいサンプルの設置(写真2)、土壌採取を行いました。埋設したサンプルは数年置いて取り出す予定です。採取した土壌は、研究室に持ち帰り、分解実験を行います。サンプルの設置および土壌採取では、北極域土壌の中でも分解率の違いを見るために、植生の無い裸地とキョクチヤナギの下の土壌を用いました。

少し蛇足ではありますが、ニーオルスンでの活動中、プラスチック製のごみをフィールドで目にすることが何度かありました。既に北極域にプラスチックごみが広がっていることを鑑みると、北極のような厳しい環境下でも分解できるようなプラスチックが必要であると言えます。私の実験で北極域での生分解性プラスチック分解率が分かれば、新規材料の開発に役立ちます。それにより持続可能な社会の実現に繋がると考えております。

(写真3)飛行機から見た氷河

北極域ではほかにも様々な貴重な体験ができました。最も印象に残ったのは氷河です。特に、ニーオルスンからロングイヤービンへ向かうチャーター機から見た氷河は、とても壮大でその風景は目に焼き付いています(写真3)。

最後に、今回の派遣を支えてくださった皆様、ArCSⅡ若手人材海外派遣プログラム関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post 北極域土壌を用いた生分解性プラスチックの分解率調査 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
グリーンランド北西部 カナックにおける氷河流出河川の音響観測 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-15-2/ Thu, 21 Nov 2024 04:56:15 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13332 若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣 中山 智博(北海道大学) ArCS II若手人材海外派遣プログラムの支援を受け、2024年7月17日から8月7日までの3週間グリーンランド北西部に位置するカナックに […]

The post グリーンランド北西部 カナックにおける氷河流出河川の音響観測 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
中山 智博(北海道大学)

ArCS II若手人材海外派遣プログラムの支援を受け、2024年7月17日から8月7日までの3週間グリーンランド北西部に位置するカナックに滞在し、氷河から流出する河川の流量観測、音響観測、河川の動態観測を行いました。

近年グリーンランド北西部カナックでは氷河の融解が進み、氷河から流出する河川の氾濫による洪水被害が多発しています。2023年には村と空港をつなぐ道路が冠水、橋が破壊される大規模な洪水が発生しており、河川の流出状況を継続的に観測することや河川の変動状況を把握することが重要な課題となっています。

(写真1)流速計を用いた流量観測の様子(左)と研究対象の河川(右)

従来の手法を用いた河川の流量観測では、写真1のように観測者が川の中に入って水深を測定して川の断面の形を決定し、その断面を通過する水を流速計によって計測し、流量を求めます。1度の観測で得られる流量データは1つの点ですので、流量と相関関係がある水位のデータを連続的に観測し、水位のデータを用いて流量を復元します。水位から流量を復元するためには、流量と水位の相関関係を求めて変換する式を作る必要があり、そのために何度も観測を行います。このように、従来の手法は非常に労力がかかるため、私は川に入ることなく河川を流れる水の音を計測することで、河川の流量を把握できる手法の開発を行っています。

音の強さと流量の大きさには相関関係があり、音を計測することで流量を把握することができます。今回の調査では、4台の音響センサを川のそばに上流から等間隔で設置し、河川の音を観測しました。

(写真2)タイムラプスカメラ(左)と音響センサ(右)のメンテナンスの様子

また、音の大きさの変化が流量の変化によって引き起こされたのか、音源である河川とセンサの距離が変わったことで引き起こされたのかを把握するため、3台のタイムラプスカメラも合わせて設置しました(写真2)。これにより、より正確な音響センサを用いた流量観測が実現することが期待されます。

(写真3)カナック村とその空に出現した非常に珍しい大気光学現象(幻日環、120度幻日、ブルーサークル)(左)、全天を覆うように太陽の周りに出現した様々な大気光学現象(右)

今回滞在したカナック村(写真3)は、北緯77.5度という北極圏の中でもかなり緯度の高い場所に位置しており、滞在期間中は常に太陽が出ている白夜の状態でした。

滞在中、氷晶から成る雲が太陽に重なり、氷晶によって屈折、反射、散乱された太陽光が作る大気光学現象が何度も見られました。その中でも特に、7月26日に見た現象は全天を覆う規模で、理論上見ることができるほぼ全ての現象が1度に現れました。この日見たカナックの空を生涯忘れることはないでしょう。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post グリーンランド北西部 カナックにおける氷河流出河川の音響観測 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
スバールバル諸島ニーオルスンでの下層雲観測 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-15-1/ Thu, 21 Nov 2024 04:55:49 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13330 若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣 山田 耀(東京大学) 曇りの日に空が暗くなることからも馴染み深いように、雲は太陽光を反射します。地球がどの程度暖められるかは地球が受け取る太陽放射エネルギー量によっ […]

The post スバールバル諸島ニーオルスンでの下層雲観測 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
山田 耀(東京大学)

曇りの日に空が暗くなることからも馴染み深いように、雲は太陽光を反射します。地球がどの程度暖められるかは地球が受け取る太陽放射エネルギー量によって決まりますので、雲による太陽光反射は地球の気候に大きく影響します。中でも下層雲(高度約2,000m以下の雲)は地球を冷却する効果が強いと言われていますが、その生成・維持・消滅の詳細なプロセスには未だ理解されていない部分が数多く残っています。気候変動を予測するモデル間でも雲量の予想には大きなばらつきが見られており、雲の物理過程を明らかにしていくことは重要であると考えられます。

北極では他地域に比べ急激な温暖化が進んでいます。気候変動によって北極の下層雲の性質がどのように変化するかを素過程から明らかにするため、今回私たちはノルウェーのスバールバル諸島ニーオルスンを訪れました。主な目的は、下層雲の連続観測・遠隔監視が行える環境を整備するため、標高約500mの山に観測機器Hawkeyeを設置することでした。Hawkeyeには、数百マイクロメートル程度までの雲粒の大きさを測定する装置、数ミリメートル程度までの雨粒の形状を測定する装置、そして雨粒を直接撮影する装置の3種類の観測装置が備わっています。雲粒や雨粒の取り込み口は上を向いていないため、Hawkeye内部に粒子を取り込むための空気の流れを作るファンや、機器全体が風向きに応じて回転して効率的に粒子を取り入れられるようにするフィンが付属しています。多少のトラブルはあったものの、設置は10日間の滞在期間内に問題なく終わらせることができました。

(写真1)設置が完了したHawkeye

設置後は稼働状況を注視し、Hawkeyeの周囲を雲が覆うたびに雲粒が非常に多く観測される様子を確認することができました。帰国後も現地のコンピュータにリモート接続し監視を続けています。時折装置内にゴミが入るなどのトラブルが発生するものの、現地の技術者の方々にメンテナンスしていただいて概ね問題なく稼働を続けられています。他の測器の観測データなどとも比較しながら、蓄積されたデータの解析を随時進めていきたいと考えています。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post スバールバル諸島ニーオルスンでの下層雲観測 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
スバールバル諸島ロングイヤービンにおける高緯度北極植物の光合成測定 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-14-2/ Mon, 18 Nov 2024 01:34:20 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13318 若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣 大﨑 壮巳(早稲田大学) 高緯度北極の植物が生育できる(すなわち光合成できる)期間は、雪のない短い夏の期間に限られます。しかし、北極域では温暖化が急速に進行しており […]

The post スバールバル諸島ロングイヤービンにおける高緯度北極植物の光合成測定 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
大﨑 壮巳(早稲田大学)

高緯度北極の植物が生育できる(すなわち光合成できる)期間は、雪のない短い夏の期間に限られます。しかし、北極域では温暖化が急速に進行しており、温度上昇とそれに伴う無雪期間の長期化が観測されています。そういった急激な環境変化に対して、低温環境に適応した高緯度北極はどのように応答しているのでしょうか?温暖化によって高緯度北極植物の生育が促進されるのか否かは、北極陸域生態系における炭素循環にも大きく影響する重要な研究課題ですが、植物の生理生態学的な応答メカニズムに関しては十分に解明されていないのが現状です。本研究の目的は、温暖化によって長期化する無雪期間が、高緯度北極植物の生育にどのような影響をもたらし得るのか、光合成・呼吸活性に基づいて予測することです。

今回私が渡航した高緯度北極のノルウェー領スバールバル諸島スピッツベルゲン島ロングイヤービン(78° 13’ N, 15° 38’ E)では、6月上旬に今年の雪解けが確認されました。北極の天候は年変動が大きいですが、平年通りであれば9月上旬から中旬にかけて最初の積雪が観測されると思われます。そのため、ここに生育する植物は、3ヵ月程度の短い期間に成長・繁殖を行う必要があります。

(写真1)光合成測定の様子

渡航期間中は、落葉性植物3種(キョクチヤナギ Salix polaris、ジンヨウスイバOxyria digyna、ムカゴトラノオ Bistorta vivipara)を対象として光合成を定期的に測定し、光合成活性の経時変化を調べました(写真1)。これは、長期化する無雪期間を、高緯度北極植物が有効に活用できるかどうかを調べるためです。測定中大変だったのは、高緯度北極植物が厳しい北極の環境を生き抜くために小さく・地面を這うように矮性化しているため(写真2)、光合成測定の器械に挟み込むだけでもかなり神経を使いました。また、定期測定している植物個体を、トナカイやグース(雁の仲間)が食べようとするため(写真3)、ヒヤヒヤさせられました(結局何枚か葉を食べられてしまいました…)。

(写真2)木本植物のキョクチヤナギでさえコケ群落に埋もれてしまうサイズ感
(写真3)光合成測定中に近寄ってきたトナカイ(食べるのに夢中で人間のことはあまり気にしていません)

私がスバールバル諸島で調査を行うのは2回目ですが、北極植物の季節変化は日本の植物の何倍も速いため気が抜けず、北極研究ならではの大変さを痛感する日々でした。一方で、実際に調査・観察することで初めて気が付くことも多く、日々好奇心が刺激され、大変実りのある調査になったと思います。

最後になりましたが、本調査ではArCS II若手人材海外派遣プログラムの関係者の皆様や共同研究者の皆様をはじめとして、多くの方々の支援を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post スバールバル諸島ロングイヤービンにおける高緯度北極植物の光合成測定 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
European Geoscience Union General Assembly 2024への参加/発表 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-11-14-1/ Mon, 18 Nov 2024 01:33:40 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=13316 若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣 浜本 佐彩(名古屋大学) 2024年4月14日~19日にオーストリアのウィーン国際センターで行われたEuropean Geoscience Union Genera […]

The post European Geoscience Union General Assembly 2024への参加/発表 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
浜本 佐彩(名古屋大学)

2024年4月14日~19日にオーストリアのウィーン国際センターで行われたEuropean Geoscience Union General Assembly 2024(EGU)に参加しました。EGUは地球・惑星・宇宙科学の全分野を網羅し、世界中の研究者約2万人が参加する大規模な国際学会です。私は研究分野であるアイスコアのセッションを主に傾聴し、最近のアイスコア研究の動向を知ることができました。また、アイスコアだけでなく、気候モデリング等の幅広い分野の研究を学ぶことができました。

(写真1)EGU会場

今回私はポスターセッションにて、グリーンランド南東部で掘削されたアイスコアの年代決定について発表を行いました。ポスター形式での発表も、英語での発表も私にとって初めての試みだったのでとても苦戦しましたが、様々な研究者からフィードバックをいただくことができ、多くのことを得ることができました。

(写真2)ポスター発表の様子

また、学会の期間中にアイスコアの若手研究者の集まりが開催され、同年代のネットワークを築くこともできました。ランチタイムに特定のコミュニティでの集まりが開催されていることもあり、交流の場が設けられていました。

この渡航で刺激をたくさん受け、とても有意義な時間を過ごすことができました。今後の研究では、他の人の発表から得た気付きや、今回の発表でいただいたご指摘を取り入れていこうと思います。最後になりましたが、このような機会をくださったArCS II若手人材海外派遣プログラムの関係者のみなさま、本研究にかかわってくださったすべての方々に、深く感謝申し上げます。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post European Geoscience Union General Assembly 2024への参加/発表 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
Ocean Science Meeting 2024への参加/発表 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-04-23-4/ Tue, 23 Apr 2024 02:05:27 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=12104 若手人材海外派遣プログラム参加者:2023年度第1回短期派遣 大谷 若葉(北海道大学) 2024年2月18日~23日に亘り北米・ニューオーリンズにて開催されたOcean Science Meeting 2024(以下OS […]

The post Ocean Science Meeting 2024への参加/発表 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2023年度第1回短期派遣
大谷 若葉(北海道大学)

2024年2月18日~23日に亘り北米・ニューオーリンズにて開催されたOcean Science Meeting 2024(以下OSM)に参加し、発表を行いました。OSMは2年に1度開催される海洋に関する国際学会です。口頭発表は約20ホールで同時に行われ、ポスターは2500枚以上と大きな学会でした。

(写真1)Ocean Science Meeting 2024の会場

私は’Arctic Ocean Changes and processes‘という北極の海洋に関するセッションにおいて、修士論文で取り組んだ内容について発表を行いました。発表形式はデジタルポスターで、最初に3分間自身のポスターの概要を話し、その後各自のポスター前で聴衆と議論を行います。私の研究領域が日本では少ない西グリーンランド域であるため、グリーンランド縁辺の研究が盛んな米国の研究者らと多くの議論を交わすことができました。自身の研究はモデル研究なのに対し、同領域の観測を行っている研究者とお話しすることができ、多くの学びを得られました。また、期間中は他の方の発表を聴講したり、エキシビジョンホールで企業の方とお話したりもしました。

(写真2)3分トークでのポスター発表中の様子

初めての国際学会、英語での発表でしたが緊張せずに満足のいく発表ができたと思います。様々な方に興味を持ってもらえたことから、自身の研究に自信が持てました。

最後に、本派遣を通じて貴重な体験が出来ました。このような機会を与えてくださったArCS II若手人材海外派遣プログラムに感謝の意を表します。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post Ocean Science Meeting 2024への参加/発表 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>
UCLAでの北極ダストに関する研究交流・共同研究 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2024-04-23-3/ Tue, 23 Apr 2024 02:05:22 +0000 https://www.nipr.ac.jp/arcs2/?post_type=project_report&p=12096 若手人材海外派遣プログラム参加者:2023年度第1回短期派遣 河合 慶(名古屋大学) 世界中の乾燥地から放出されるダスト(黄砂など)は、太陽光を散乱・吸収したり、雲粒・氷晶の核(雲凝結核・氷晶核)として働いたり、海洋生態 […]

The post UCLAでの北極ダストに関する研究交流・共同研究 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>

若手人材海外派遣プログラム参加者:2023年度第1回短期派遣
河合 慶(名古屋大学)

世界中の乾燥地から放出されるダスト(黄砂など)は、太陽光を散乱・吸収したり、雲粒・氷晶の核(雲凝結核・氷晶核)として働いたり、海洋生態系に栄養塩を供給したりすることで、地球の気候や環境に影響を与えています。近年、北極の陸域では、温暖化によって夏季に積雪が完全に融解する場所が増え、その露出した地表面からダストが放出されています(以下、北極ダストと呼びます)。しかも、このような地表面から放出される北極ダストは、氷晶核として働く能力が非常に高いことが実験から示されています。私は、この実験結果を全球気候モデルに導入し、現在気候での数値シミュレーションを行うことで、夏から秋の北極域の下層雲(高度約0~3 km)において、北極ダストが氷晶核として非常に重要な役割を果たすことを明らかにしました。北極域では、全球平均の約2~4倍の速度で温暖化が進行しており、北極ダストの放出量や気候影響の長期変動について、さらに研究を進める必要があります。

(写真1)UCLAのキャンパス内の様子
(写真2)UCLAで使用したデスク

そこで、ArCS II若手人材海外派遣プログラムにより、アメリカ・ロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA・写真1)を訪問し、ダストの放出や気候影響に関する最先端の研究を行っているJasper Kok教授と約4週間、研究交流・共同研究を行いました。1週目には、Kok教授と打ち合わせを2回行い、北極ダストの放出量や気候影響の長期変動に関する共同研究として行うシミュレーションの設定や期間について議論しました。毎週木曜日に行われているグループミーティングでは、博士課程の学生の研究発表を聞き、Kok教授のグループが現在進めている研究テーマについて知ることができました。研究室では、私のデスクとPCモニターを用意していただき、快適な研究環境を構築できました(写真2)。2~4週目には、Kok教授から提供していただいたダスト放出量データを全球気候モデルCAM-ATRASに導入し、様々な設定でシミュレーションを実行しました。その結果や問題点について、毎週、Kok教授と打ち合わせを行いました。グループミーティングでは、私の最近の3つの研究成果について発表し、意見交換を行うことができました。

私にとって、約1カ月間の海外滞在は初めてだったため、研究面だけでなく、生活面・人生面でも貴重な経験になりました。このような機会を与えてくださったArCS II若手人材海外派遣プログラムや関係者の皆様に深くお礼申し上げます。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら

The post UCLAでの北極ダストに関する研究交流・共同研究 first appeared on ArCS II 北極域研究加速プロジェクト.

]]>