令和に元号が代わり、お祝いムードが高まるとともに新しい時代はどうなっていくのか期待も大きかったと思います。ところが、新型コロナウイルス感染症の突然の蔓延、世界の経済も巻き込む欧州での紛争などこれまでの生活が大きく変わる、そういう令和ひとけた時代となりました。一方でIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書が示すように気候変動もまた人類の脅威の一つであることは誰もが認めるところでしょう。情報・システム研究機構の国立極地研究所は、そのような地球の今後の変化を知る上で重要な「極地」の観測研究を行う研究所です。北極と南極、そこでの氷床、海洋、地形、地質、大気などを異なるアプローチで様々な時間・空間スケールの変動を多面的にとらえることが極めて重要となっています。
国立極地研究所は、1973年に設置された「極地の観測と総合的研究を行う」ことを目的とした大学共同利用機関、すなわち国内共同研究や国際共同研究を通じて全国の大学の研究力強化に資するための研究機関です。研究対象が極域を中心とする地球規模の環境・変動ですので、国際協力が必要不可欠となっています。国際学術会議(ISC)傘下のSCAR(南極研究科学委員会)、IASC(国際北極科学委員会)、SCOSTEP(太陽地球系物理学科学委員会)などの学術組織の枠組みで各国と連携した観測研究を行いつつ、世界先端の「極地発」のサイエンスを追求しています。
「過去と現在の南極から探る将来の地球環境システム」を重点テーマとする南極地域観測第X期6か年計画(令和4年度~令和9年度)、北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)(令和2年度~令和6年度)などの観測研究事業を推進して、極地に関する観測研究を総合的に行う全国唯一の研究所としての役割を果たす国立極地研究所の活動に、ぜひ皆様方のご理解とご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。
国立極地研究所長 中村卓司