ArCS 北極域研究推進プロジェクト

国際共同研究推進

テーマ2
グリーンランドにおける氷床・氷河・海洋・環境変動

テーマ2の観測・研究実施地点であるEGRIPとカナック

テーマ2では(1)グリーンランド最大の氷流の上流部で実施されている東グリーンランド深層氷床掘削プロジェクト(EGRIP)に参加し、氷床の変動メカニズムとその気候変動との関わりの解明に取り組む一方、(2)近年の環境変化が加速する一方でデータの空白域でもあるグリーンランド氷床の北西部に着目し、気候変動の影響を受けた氷河氷床と海洋の変動と相互作用、さらに生じている自然災害や社会への影響に関する研究を実施しました。

具体的な成果として、(1)ではEGRIPサイトでのアイスコア掘削に参加し、サンプルの国際共同分析を進めるとともに、掘削地点近傍のピット観測を実施し、層位観察とサンプルの分析結果から過去10年の表面質量収支変動を復元しました。過去に得られたアイスコアサンプルの分析も並行して進め、過去350年間のブラックカーボン(BC)濃度の変動を明らかにしました。また、将来の海面上昇予測に深く関係する氷床氷の変形に関して人工氷とアイスコア氷を用いた室内実験を行い、不純物を含む氷の流動則の改良を行いました。数値予測に関しては氷床モデルを用いた海水準変動予測のために氷床変化にともなう地殻変動の計算を行うGIAモデルの改良を進め、氷床シミュレーションの精度向上を実現しました。

保管中のアイスコア 提供:繁山 航(総研大)

(2)では国外の大学や現地協力者の支援を受け、急激に縮小する氷河氷床の質量損失速度を定量化し、その変動メカニズムの解明に貢献する成果をあげました。特にカービング氷河の変動と末端プロセスに関して、多くの新しい知見を得てその成果を発表しました。さらに氷河氷床から流出する融解水が海洋におよぼす影響、特にフィヨルドに栄養塩を供給する役割を定量的に示すことにはじめて成功しました。また動植物プランクトンから海鳥、海生哺乳類に至るフィヨルド生態系に氷河が果たす役割が示されました。一方陸上では、近年頻発する氷河河川洪水や地すべりなどの自然災害について、そのメカニズムと将来の見とおしを明らかにしました。また大気中の物質輸送や降雪、海氷や氷山の分布を明らかにし、グリーンランド沿岸域の環境変動を定量的に示しました。これらの成果は、毎年カナックでワークショップを開催して地域住民にフィードバックされました。地域住民と情報交換を行いながら実施する調査観測スタイルは、今後の研究のモデルケースとなりうるものです。

上)カナック氷帽での積雪観測。積雪水当量を求め、氷河の表面質量収支を決定する 提供:近藤 研(北海道大学)
下)海洋観測の研究成果を市民に説明する 提供:漢那 直也(北海道大学)

テーマの背景や概要

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研究業績

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テーマ2の活動により得られたデータの情報

調査・観測

モデル情報