日本と世界の北極研究の架け橋
センター長 宮岡 宏
当センターは、北極域の大気、雪氷、海氷・海洋、陸域・海洋生態、陸上生態、超高層大気の研究推進をめざし、1990年6月、国立極地研究所に北極圏環境研究センターとして設置され、2004年4月より北極観測センターとして活動してきました。北極をとりまく国際動向に戦略的に対応して研究・観測を推進し、研究企画力を強化するため、2015年4月に「国際北極環境研究センター」へと改組しました。我が国の北極研究事業の代表機関として、これまでにGRENE北極気候変動研究事業(2011-2015年度)、北極域研究推進プロジェクト(ArCS、2015-2019年度)を推進してきましたが、2020年度からは北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)を新たに開始しました。
センターでは、北極圏国の研究機関との間で施設利用や観測支援に関する協定を締結し、国内研究者の共同利用に供するとともに、国際共同研究への機会提供を進めています。
ニーオルスン基地を始め、スバールバル大学(UNIS)、EISCAT(欧州非干渉散乱)レーダー、アラスカ大学国際北極圏研究センター(IARC)、グリーンランド天然資源研究所(GINR)、ロシアのスパスカヤパット、ケープバラノバ、カナダ極北研究ステーション(CHARS)等の北極圏の研究・観測施設が利用できます。
アイスランドー南極昭和基地におけるオーロラ共役点観測をはじめ、EISCATレーダー実験、東グリーンランド氷床コアプロジェクト(EGRIP)等の国際共同研究を実施し、国内研究者の参加を受け入れています。2019年からは、北極海の国際共同研究として史上最大級のMOSAiC計画(北極気候の研究を目的とする学際的漂流観測)にも参加しています。
2016年4月より、当センターと北海道大学北極域研究センター、海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センターによる「北極域研究共同推進拠点」を形成し、運営しています。北極域における環境と人間の相互作用の解明に向けた異分野連携、産学官連携による取組みの中で、当センターで管理する共同利用施設を観測拠点として提供しています。
2011年5月に北極環境研究者の全国ネットワーク組織として設立され、当センターに事務局が設置されています。JCARでは、『北極環境研究の長期構想』作成のほか、国内外の委員会情報の収集・紹介や研究推進に関する意見交換、人材育成支援、北極環境に関する情報収集、広報・普及活動などを行っています。2015年には「北極科学サミット週間(ASSW)2015」を共催し、我が国で最大規模の北極研究集会である国際北極研究シンポジウムを2018年の第5回(ISAR-5)から主催しています。
スバールバル諸島スピッツベルゲン島ニーオルスン(北緯79度、東経12度)。1991年1月にノルウェー極地研究所と合意書を締結し、観測拠点として利用を開始しました。ニーオルスンの国際的な共同観測体制の下で、雲、エアロゾル、放射、温室効果ガス、植生の分布や生態系の観測などを実施しています。2019年4月にはニーオルスン観測村の中心部に整備された新観測棟に移転しました。
日本のニーオルスン基地が入る新観測棟