ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

サルイットDay 5:サルイットの人々、自然、新体験にありがとう

ここまで4日連続で順調にサンプリングできたので、もともと予備日に当てられていた今日はフリータイムになりました。北緯62度のサルイットの「日の出」を見たくて朝4時に早起きしたのですが、あいにくの曇り空で小雨も降ってきて、折からの南西風に吹かれた雨粒は、ソロモン諸島から来た私には氷のように冷たく感じられました。急いでジャケットの袖を下ろそうとしたら、足元の草が動きました。

何が動いたのだろうと見てみると、草の根元にカモフラージュして隠れていたのはレミング(タビネズミ)でした。隠れているつもりなのか、じっと身動きしないレミングの写真を撮ろうとしているうちに、辺りが明るくなってきました。

サルイット村の人々が話す言葉はイヌクティトゥット語と英語ですが、フランス語を話す人もいます。地元出身のエリザベスという女性が、私にサルイットを案内しようと言ってくれたので、午前中、案内してもらいました。

彼女はサルイット村の真ん中にある白い建物を指して聖公会の教会だと教えてくれました。キリスト教のうち聖公会が入ってきたのは1955年で、教会が建てられたのは1957年、2015年に改築されたそうです。

公民館には若い世代が集い、あるいは、様々な村の活動が催されます。もう一つの集会所は空いていましたが、ふだんは女性の職業訓練等が行われています。

他のイヌイットの集落と同様に、サルイットでも狩猟(農耕はない)、衣類、食べもの、極北でのサバイバル技術、芸術、伝説や神話、集団生活(分かち合いや助け合いなど)の伝統的な生活様式が、変化に曝されています。彼女はきっとした声で、サルイット村が直面している問題へのチャレンジ、そして、伝統な生活を保存するための取り組みについて説明してくれました。

彼女に御礼を言って別れながら、伝統的な生活を守ろうとする取り組みは、カナダ北辺のサルイットだけの問題ではなく、南緯9度の私の国(ソロモン諸島)の問題でもあり、世界中の多くの文化にも当てはまるだろうと思いました。

サルイットの人々の生活、環境、そして、ツンドラでの新体験は、私に多くのインスピレーションを与えてくれました。

メリー・サイロンガ・ファルアブル
(和訳:長沼 毅/広島大学(テーマ6研究協力者))
事務局注:メリー・サイロンガ・ファルアブルさんはArCSの参加研究者ではありませんが、
ArCSテーマ6の研究に必要な調査をしていただきましたので、調査の様子をご紹介いたします。


サルイットを見守るかのような4m大のイヌクシュク


「ハリウッド・サイン」スタイルのサルイット・サイン