近藤特任教授が瑞宝中綬章を受章しました

2023年4月29日

2023年春の叙勲において、当研究所の近藤豊特任教授(東京大学名誉教授)が瑞宝中綬章を受章しました。

人間活動による地球規模での大気組成の変化は、成層圏オゾン破壊、グローバル大気汚染、地球温暖化など、大気環境や気候に大きく影響しています。近藤教授は、名古屋大学及び東京大学在職時より一貫して高精度測定の追求という観測の原点に軸足を置き、直接測定法に基づく様々な測定器を独自に開発してきました。そして低緯度から北極までの気球、航空機、地上観測を国際共同研究として立案・実施し、大気環境科学の重要課題の解明に大きく貢献しました。

成層圏オゾン研究では、オゾン化学の鍵となる窒素酸化物の測定器を開発し、フランスやスウェーデンなどで気球観測を実施することにより、オゾン破壊におけるエアロゾル(大気微粒子)上で起きる不均一反応の重要性を実証しました。

対流圏のオゾンは温室効果ガスであり生物に有害な物質です。その生成速度は窒素酸化物濃度により支配されます。近藤教授は超高感度の窒素酸化物測定器を開発し、NASAによる地球規模での航空機観測に参加することにより、対流圏のオゾンの化学反応過程を統一的に把握することに貢献しました。

地球温暖化研究では、太陽放射を強く吸収するエアロゾルであるブラックカーボン(BC)の大気・降水中濃度の測定技術を開発し、アジアや北極での動態と気候影響明らかにしました。このような研究実績により、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)および北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)で開発したBC測定装置COSMOSはBCの標準測定器として国際的に認められつつあります。

近藤教授のこれらの卓越した研究成果は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書、世界気象機関/国連環境計画(WMO/UNEP)オゾンアセスメント報告書、北極評議会/北極圏監視評価計画(AC/AMAP)報告書等に反映され、社会貢献も果しました。

さらに詳しい研究内容はhttps://yutaka-kondo.sakura.ne.jpをご覧ください。