国際連携拠点の整備
実施責任者:榎本 浩之(国立極地研究所)
背景
「我が国の北極政策」において、我が国が取り組むべき研究開発の一つとして、北極圏国における研究・観測拠点を戦略的に整備し、国際共同研究等を実施することにより国際連携を強化するとともに、若手研究者等を派遣し、人材育成を効果的に推進することが求められています。
定義
ArCSにおける国際連携拠点とは、本プロジェクトの目的(※「プロジェクトの目的」参照)達成のため、国際共同研究ならびに人材育成等の基盤として、戦略的に北極圏国等に設置・維持する研究・観測施設のことを指します。
活動概要
下記の研究・観測拠点を計画的に整備し、国際共同研究メニューでの各研究テーマによる観測などでの利用促進に努めます。
アメリカ
アラスカ大学国際北極圏研究センター(IARC)/ 64°51'N 147°51W
ポーカーフラットリサーチレンジ(PFRR)フラックス観測スーパーサイト/ 65°07'N 147°29W
アラスカ地域における我が国の研究・観測拠点としてIARC内にオフィススペースを有し、陸域環境研究の基盤的設備であるフラックス観測タワーを中心とした観測サイトの運用の一翼を担います。
カナダ
カナダ極北研究ステーション(CHARS)/ 69°07'N 105°02'W
ラバル大学北方研究センター(CEN)ステーション/ 53°N〜83°N
2017年からの運用開始を目指してカナダ政府が整備を進めているCHARSに、日本の研究者ならびに学生が研究・観測や訓練・実習等に利用できる研究拠点を確保し、カナダ北極圏の国際共同研究を推進します。なお、フィールド訓練等は、経験豊かな現地住民の協力を得て実施します。CENは、ラバル大学、ケベック大学リモースキー校およびケベック大学州立科学研究所からなるセンターで、カナダ東岸の北緯53度から北緯83度の間に8つほどのステーションを維持しています。主に生物学、微生物学、地理学、地質学、凍土学、工学、考古学、土地利用の研究者や専門家が利用します。
ロシア
スパスカヤパッド観測拠点 / 62°14'N 129°37'E
ケープ・バラノバ基地 / 79°18'N 101°48'E
スパスカヤパッドについては、ロシア科学アカデミーシベリア支部北方圏生物問題研究所(IBPC)と協力し、フラックスタワーを中心とした観測活動を行います。さらに、ロシア北極南極研究所(AARI)が2013年に再開した北極海に面したケープ・バラノバ基地での観測活動を行い、大気・海氷データの取得を行います。
ノルウェー
ニーオルスン基地 / 78°55'N 11°56'E
スバールバル大学(UNIS)/ 78°13'N 15°39'E
1991年に極地研が開設したニーオルスン基地は、ノルウェーが管理する国際観測村(北緯79度)にあり、我が国の北極研究の最前線の一つです。ドイツ、イタリア、中国、韓国など多くのACオブザーバー国が戦略的にニーオルスンでの研究活動に力を入れており、我が国も最重要拠点の一つとして基盤整備と有効活用を図る必要があります。
スバールバル大学は、世界最北の高等教育研究機関として充実した北極研究に関わる観測施設や教育訓練コースを整備しており、これらも積極的に活用します。
デンマーク/グリーンランド
東グリーンランド深層氷床掘削プロジェクト(EGRIP)観測拠点 / 75°37'N 35°59'W
グリーンランド天然資源研究所(GINR) / 64°11'N 51°41'W
EGRIP計画に参画し、掘削サイトをグリーンランド氷床観測拠点として整備・活用します。また、グリーンランド自治政府のあるヌークのGINRに我が国のグリーンランドにおける研究拠点を設置します。
上記の拠点整備により、北極海沿岸の5カ国に連携拠点を持つことになります。この他、アイスランドにおいては、アイスランド大学および地元住民の協力を得て1983年より30年以上にわたり2ヶ所のオーロラ観測拠点を維持しています。また、スウェーデンおよびフィンランドにおいては、1996年以降、欧州非干渉散乱(EISCAT)レーダ共同運営を通じて、スウェーデン宇宙物理学研究所、オウル大学、ソダンキラ地球物理観測所、ならびにスウェーデン研究評議会やフィンランドアカデミーと緊密な協力関係を構築しています。
本事業において、これらの北極研究機関との関係を強化することにより、我が国の北極研究および人材育成を効果的に推進するとともに、これらの国が直面する北極に関わる科学的・社会的・政策的課題をいち早く把握することにも貢献します。
実施体制
実施担当者 | |
---|---|
氏名 | 所属機関 |
榎本 浩之 | 国立極地研究所 |
宮岡 宏 | 国立極地研究所 |
兒玉 裕二 | 国立極地研究所 |
末吉 哲雄 | 国立極地研究所 |
内田 雅己 | 国立極地研究所 |
東 久美子 | 国立極地研究所 |
小林 秀樹 | 海洋研究開発機構 |
ArCS通信
- CHARSワークショップ(2019年07月09日)
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- East GRIPにおける物理解析(2018年09月21日)
- ロシア ケープ・バラノバ基地訪問(2018年09月13日)
- 2018年のEGRIPプロジェクト(東グリーンランド氷床深層コア掘削)活動報告(2018年08月28日)
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