日本の南極観測について

日本の南極観測のルーツは、今から100年以上前の1912(明治45)年に、白瀬しらせのぶ ひきいる南極探検隊によって実施された学術探検にまでさかのぼります。その後、1957(昭和32)〜1958(昭和33)年に行われた国際地球観測年(International Geophysical Year; IGY)と呼ばれる純学術的な国際協力事業の一環として、閣議決定に基づき、1956(昭和31)年に第1次南極地域観測隊の派遣が決定し、途中南極観測船の引退に伴う中断をはさみつつ、現在まで60年以上も南極観測を続けています。

南極地域観測事業の概要と体制

南極地域観測事業は、1955年の閣議決定にもとづき、国の事業として実施されています。南極観測事業では、文部科学大臣を本部長とする南極地域観測統合推進本部(以下、本部または南極本部)が各関係機関の統合推進を行っています。下図の実施体制に示されているように、南極観測事業には多くの省庁が関わっています。

国立極地研究所は南極観測事業の実施中核機関として、観測計画の立案・実施を担当するともに、隊員編成、訓練、物資輸送、基地設備の整備・運用、資料・試料管理、広報などの後方支援も担当しています。実務的には国立極地研究所に設置された南極観測センターを中心に、様々なセンターや室がこれらの業務にあたっています(国立極地研究所の組織図)。

南極地域観測事業実施体制

南極地域観測事業のあゆみ

1957年に第1次南極地域観測隊が昭和基地を開設以降、日本は現在に至るまで60年以上に渡り南極観測を続けています。以下のバナーよりそのあゆみをご覧ください。

南極地域観測事業のあゆみ 
観測船 隊次 主な内容
1957 宗谷 1 第1次観測隊出発(1956年)、昭和基地開設
  2 越冬断念
  3 越冬再開、タロとジロ生存発見
1960 4 やまと山脈初調査、福島隊員遭難
  5 南緯75度までの内陸調査(南極条約発効(1961年))
  6 昭和基地閉鎖
 
南極観測の中断
 
  ふじ 7 昭和基地再開(1967年)
  8 昭和基地—マラジョージナヤ基地及びプラトー基地往復、南極点往復旅行準備
  9 南極点到達
  10 やまと山脈で隕石発見、内陸雪氷調査開始
1970 11 オーロラロケットによる観測成功、みずほ基地開設(※1)
  12 みずほ基地で氷床掘削
  13 みずほ基地越冬観測
  14 やまと山脈—白瀬氷河中流域三角鎖での再測量成功
  15 やまと山脈で隕石663個採集
  16 コウテイペンギンのルッカリー(営巣地)発見
  17 国際磁気圏観測開始、ロケットによる観測
  18 みずほ基地通年越冬観測
  19 ロケットによる観測
  20 みずほ基地大気観測開始、隕石3600個採集
1980 21 初の本格的生物潜水調査
  22 人工地震による氷床下大陸構造観測
  23 オゾンホール発見
  24 セール・ロンダーネ山地へ雪氷調査
  しらせ
(初代)
25 みずほ基地で700m氷床掘削、二酸化炭素モニタリング開始
  26 あすか基地開設(※2)、氷床頂上到達し「ドームふじ」と命名
  27 昭和基地—アイスランドオーロラ共役点観測開始
  28 あすか基地越冬観測開始、セール・ロンダーネ山地調査開始
  29 初の女性隊員夏隊に参加
  30 昭和基地に多目的大型アンテナ設置
1990 31 ヘリコプター利用セール・ロンダーネ山地地学調査開始
  32 ポーラーパトロール気球打ち上げ成功、あすか基地閉鎖
  33 新大型雪上車使用開始、昭和基地整備十ヶ年計画開始
  34 超伝導重力計による重力観測開始
  35 ドームふじ基地開設(※3)
  36 湖沼コケ群落の発見、ドームふじ越冬開始
  37 ドームふじ基地で2503m氷床掘削成功
  38 ドームふじ大気物質循環観測
  39 女性隊員初越冬(「環境保護に関する南極条約議定書」発効(1998年))
  40 大型短波レーダ設置、アムンゼン湾地学調査
2000 41 やまと山脈とベルジカ山脈で隕石4180個採集
  42 白瀬氷河上流域での雪氷観測
  43 専用観測船による海洋観測、氷床下大陸構造人工地震観測
  44 ドームふじ基地での越冬、NHK南極支局開設
  45 ドームふじ氷床全層掘削開始、インテルサット衛星通信開始
  46 大気ラドン濃度連続観測、エアロゾル分布季節変化観測
  47 日独航空機観測、ドームふじ氷床3029m掘削
  48 日本の南極観測50周年、国際極年開始
  49 S17航空機観測拠点建設、ドームふじ氷床3035m掘削
    50 初のチャーター船「オーロラ・オーストラリス号」、初の外国基地査察
2010 しらせ
(現行)
51 教員南極派遣プログラム開始。現職教諭2名テレビ会議システムで南極から授業
  52 昭和基地から南極教室を年19回実施
  53 大型大気レーダー建設、一部観測開始
  54 米ロ合同査察団、昭和基地入り
  55 少人数(24人)による昭和基地越冬
  56 大型大気レーダー調整完了、本格観測開始
  57 基本観測棟基礎工事、大型大気レーダーフルスペック観測
  58 昭和基地開設60周年、大型大気レーダー国際共同観測
  59 アデリーペンギンの行動圏の観測
  60 氷床コアの掘削場所を決定、基本観測棟での活動開始
2020 61 往復路トッテン氷河沖集中観測、南極移動基地ユニットの実証実験

※1当時の名称は「みずほ観測拠点」
※2当時の名称は「あすか観測拠点」
※3当時の名称は「ドームふじ観測拠点」

南極地域観測6か年計画

将来構想

南極観測センター

南極観測センター

南極観測センターは、南極観測事業の中核機関としての機能を最大限に発揮するために、教員と事務系・技術系職員の融合組織として、2009年4月に組織改編しました。毎年、南極観測隊を派遣するにあたって、観測計画や企画にかかる国内外の研究者との連絡調整、附属施設である昭和基地他の維持、観測隊の編成や訓練、輸送、安全や環境保全対策などを行っています。

観測隊の編成においては、南極観測が国際プロジェクトとして行われていることから外国人研究者も同行します。特にアジア諸国との連携を深めておりアジア極地科学フォーラム(AFoPS:Asian Forum for Polar Science)を結成し、情報交換や研究者交流を行なっています。

最近の10年間で南極への輸送、アクセス手段は大きく変化し、南極観測船「しらせ」の他に南極で観測を行っているいくつかの国が共同飛行機をチャーターするドロンイングモードランド航空網(DROMLAN:Dronning Maud Land Air Network)や「海鷹丸」といった海洋調査船との連携によるものが加わり多様な対応を行っています。

センター長 野木義史

南極観測センター組織図

(2020年4月1日現在)