最古級のアイスコア取得を目指す第3期ドームふじ深層掘削

課題番号:AJ1001
代表者:川村賢二(国立極地研究所)

観測目的

南極大陸を厚く覆っている氷は、雪が押し固められてできているため、過去の環境や空気が連続的に保存されています。最近、その氷が減ってきているのではないかと疑われています。本プロジェクトでは、南極大陸の内陸から沿岸付近にかけての雪や氷、地形、地層などの調査を行い、過去に起こった南極域の環境変動の復元を進めています。

雪や氷の観測では、現存する最古のアイスコア(80万年)より古い年代まで遡るアイスコアの掘削を目指し、新たな掘削点の探査や、掘削拠点の設営に向けた輸送などを実施するとともに、過去数千年の涵養量などを知るための掘削を行っています。これまでに、米国およびノルウェーとの共同観測を含むレーダー探査などを複数回行い、ドームふじ周辺における氷床下の地形や内部層、表面質量収支などが詳細に明らかになってきました。

地形や地層については、内陸山地や沿岸域の氷河地形や、湖・海底などの地層の調査から過去の南極氷床の変動とそのメカニズムの解明を進めています。これまでの研究によって、過去に起きた南極沿岸域での急激な氷床融解や南極内陸部の氷床変動の原因が明らかになりつつあります。これらのデータは、現在進行中の南極氷床融解の理解や、将来の海面上昇予測の高精度化に繋がっていくことが期待されます。

本プロジェクトの模式図

観測内容

これまで、第1期、第2期ドームふじ深層アイスコアの掘削と解析から、過去72万年間の南極および全球の環境変動シグナルを復元し、10万年周期の氷期-間氷期変動の実態やその気候について明らかにしてきました。一方で、卓越周期の4万年から10万年への移行の実態や機構については、様々な仮説が提案されていますが、データの欠如により未だ解明が進んでいません。例えば、地球軌道要素のわずかな違いにより北半球大陸氷床の変動周期が異なっていたとする説や、大気中CO2濃度が高く、南極氷床が南半球の夏の日射量変動に応答したとする説などが対立しています。いずれにおいても、氷床や炭素循環を含む地球気候システム内の相互作用が鍵であり、それらの検証やモデリングには、南極大気や南大洋の温度、涵養量、大気中温室効果気体濃度、南北半球間の気候変動の位相差といった、アイスコアからしか得られない情報が必要です。そのため、SCARや国際北極科学委員会(IASC)等が支援するアイスコア研究の国際組織であるIPICS(International Partnership in Ice Core Sciences)は、南極域で複数の100万年を超えるアイスコアを採取することを目指して「Oldest Ice」計画を立ち上げ、この国際協力の枠組みの下で各国が掘削候補地の調査を行ってきました。日本は、第Ⅸ期計画で、ドームふじ周辺での最古級のアイスコア採取に向けた氷床の大規模な高精度レーダー探査や雪氷調査を展開して最適な掘削地点の絞り込みを行ってきており、第Ⅹ期計画では、この結果に基づいて、100万年を超える最古級のアイスコア掘削に挑みます。

第2期ドームふじ深層アイスコア掘削の様子

第2期ドームふじ深層アイスコア掘削で得られたアイスコア

第3期ドームふじ深層アイスコア掘削地点調査の様子

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