海洋生態系モニタリング

課題番号:AMB1002
代表者:高橋 邦夫(国立極地研究所)

観測目的

地球規模での環境変動が南大洋生態系に与える影響を探るために、海洋生物の生息環境とともに、そこに生息する低次生物群集(主にプランクトン)の現存量や種類組成を継続的に観測しています。14次隊(1972年)から本格的に開始され、29次隊(1987年)からは南極観測船の航路が固定され、毎年同じ時期に、同じ海域において観測することが可能となりました。

52次隊(2010年)からは南極観測船「しらせ」の砕氷能力を活かし、昭和基地沖の氷海域でのモニタリング観測を開始しました。さらに55次隊(2013年)からは専用観測船(2013‐2021年は東京海洋大学「海鷹丸」)でも「しらせ」と同じ海域で、同じ観測を継続しています。

プランクトンは環境変化に対して素早く応答するとされ、生態系変化の指標となる生物群です。このような複数船による長期的なモニタリング観測データは国際的にも希少であり、これまで多くの長期変動の解析に利用されていることから、観測の継続が望まれています。

観測内容

海洋生態系モニタリングでは、南極海・南大洋生態系の変動傾向を明らかにするため、「しらせ」および専用観測船で以下の項目を毎年同じ時期に同じ航路で観測を行ない、データを蓄積しています。

1)海洋表層観測:「しらせ」および専用観測船の航路上において航走観測により海洋表層環境のデータを蓄積します。表層の水温、塩分、二酸化炭素分圧、そして植物プランクトン量の指標となる表層クロロフィルa濃度を自動観測装置により連続的に観測します。また、船底よりくみ上げた海水を使ってクロロフィルa濃度と栄養塩を測定します。

2)浅層鉛直観測:観測定点において鉛直的な水温、塩分の測定、および層別に採水して栄養塩、全炭酸、クロロフィルa濃度の測定を行ないます。またプランクトンネットを用いて動物プランクトンを採集します。

3)氷海内停船観測:昭和基地沖の氷海域において海洋観測を行ないます。鉛直的な水温、塩分の測定、および層別に採水して栄養塩、全炭酸、クロロフィルa濃度の測定を行ないます。またプランクトンネットを用いて動物プランクトンを採集します。この観測は「しらせ」のみで行なっています。

4)連続プランクトン採集器(CPR)観測:CPRは船尾からワイヤーで吊り下げて表層10-20mの深度を曳航し、一度の観測でおよそ900kmの水平距離に生息する動物プランクトンを連続的に採集する装置です。「しらせ」および専用観測船の航路上において連続動物プランクトン採集を行なっています。

第Ⅹ期からはモニタリング観測ラインを東経110度(南緯40-65度)に絞り、12月に「しらせ」の往路、1月に専用観測船、3月に「しらせ」の復路の夏期3回の調査を実施することで、経年変動に加え季節的な変動データの蓄積を目指しています。

「しらせ」船上におけるプランクトンネットを用いたモニタリング観測風景(撮影:JARE55 水野団)

観測測器を海氷からガードするアイスフェンスを用いた氷海内モニタリング観測風景(撮影:JARE53 平山均)