課題番号:AMP1003
代表者:岡田 雅樹(国立極地研究所)
昭和基地に設置したL/S/Xバンド衛星受信システムを用いて、極軌道周回地球観測衛星のリアルタイム観測データを継続的に受信し、南極域における広域の地表面・雲、対流圏・成層圏大気のモニタリング観測を行います。南極大陸に4局しかない直接受信データ交換網構成局の一つとして、受信データを気象庁・WMOを通じて全世界の気象機関に即時配信しています。数少ない南極域の広域高層気象リアルタイムデータとして各国の数値予報の精度向上、及び全球気候再解析データ作成に有効な同化データとしても活用されるとともに、昭和基地の活動の支援データとして活用されています。
衛星観測の特徴は短時間に広範囲の観測データが得られることです。昭和基地で受信しているデータは、南極氷床の表面の温度や雲・海氷の分布を捉えています。このデータは、私たちが南極で様々な活動を安全に進めるための天気予報の材料になります。写真の白いレドーム内には衛星データを受信するためのアンテナが入っています。
昭和基地のLSXバンド受信アンテナと受信された雲画像データ
写真の上には、低気圧の雲域が次第に昭和基地(白丸)に接近するようすを連続データで示します。得られたデータは、日本や世界各国の気象局がそれぞれの国で天気予報をするためにも使われており、日々の私たちの生活に必要な気象予報の基礎データとなっています。
地球科学における重要な課題の一つに、地球温暖化があります。南極の環境は地球温暖化によってどのように変化しているのでしょうか。また、南極の環境は地球温暖化の進展にどのような役割を果たしているのでしょうか。気候の変化は私たちが生活している時間と比べればとてもゆっくりですが、広範囲に変化します。このような広範囲のゆっくりとした変化を衛星観測は捉えているはずです。この観測は、ブリザードのメカニズムのような日々の現象の研究に使われながら、南極の気候変化のようなゆっくりとした変化を記録し続けることに役立つと考えられています。
昭和基地で得られたNOAA衛星のデータ