海洋物理・化学観測

担当機関:文部科学省

海洋大循環は、熱や様々な物質等の輸送を通して、地球システムにおいて重要な役割を果たしています。南極沿岸域は、海水が凍って海氷が生成される際に形成される重い水が南極底層水となり、海洋大循環の一つの要となる基点となっている点で、重要な役割を担っています。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の報告書でも2014年の第5次評価報告書以降継続して取り上げられているように、南極沿岸域では、全球環境変動にも関わる重要な変化が進行していると考えられています。一つの変化は、南極底層水の高温化・低塩化であり、その生成量も大きく減少しています。さらに、南極氷床の融解加速による海洋への淡水の流入による底層水減少があげられます。これらは、全球を巡る海洋大循環に大きな影響を与えると考えられることから、南極域での海洋環境変化の監視は、全球規模の環境変動の予測精度を向上させるために必須であると言えます。

本プロジェクトでは、日本が継続して担ってきた観測頻度の少ない東南極(南大洋インド洋区)での観測を継続し、水深3000m以深に及ぶ物理・化学環境の動態を監視するとともに、海氷縁付近での南極底層水の監視の強化を進め、国際的な枠組である南極研究科学委員会(SCAR:Scientific Committee on Antarctic Research)の南大洋観測システム(SOOS:Southern Ocean Observing. System)との連携等により、地球環境変動への影響評価を行います。

海況調査

南大洋における海水循環等を解明するために、水温、塩分、海流等の測定や海水の化学分析を継続して行います。

南極底層水の観測

海氷縁付近における海底付近までの観測によって、南極底層水の変動に関するデータを取得します。

CTD-RMS観測(採水器付の塩分・水温・深度観測装置)